安倍晋三元首相(67)が奈良市での参院選の演説中に銃撃されて死亡した事件で、山上徹也容疑者(41)=殺人容疑で送検、鑑定留置中=が、自分で製作した手製銃のうち最も小さい銃を安倍氏の銃撃に使っていたことが7日、捜査関係者への取材で分かった。「バッグに入れられる小型の銃を選んだ」と供述しているという。事件は8日で発生から2カ月。奈良県警は押収した複数の手製銃の鑑定を進め、殺傷能力などを調べている。
捜査関係者によると、県警は事件当日、山上容疑者の自宅から、作りかけの2丁を含む手製銃7丁を押収。いずれも金属製の筒を組み合わせた形状だったが、安倍氏の銃撃に使われた銃は筒が2本で、押収した7丁と比べて小さく、持ち運びしやすい形状だったという。事件現場では、山上容疑者がショルダーバッグの中に忍ばせた手製銃を取り出す様子も確認されている。
山上容疑者は事件前日、岡山市の演説会場に筒が3本の銃を持参。安倍氏の襲撃を画策しながら、警備の厳しさから断念していた。奈良市の会場では警備の厳重さなどを想定し、小型の銃に切り替えたとみられる。
銃刀法では、金属製の弾丸を発射する能力や殺傷能力があるものなどを銃と定義し、銃刀法上の銃に該当すると判断されれば所持や発射は違法となる。県警は同法違反容疑での立件も視野に、科学捜査研究所などで押収した銃の構造や性能を鑑定。発射能力や殺傷能力の裏付けを進めている。
精神鑑定、取り調べ中断 母は謝罪模索、伯父は返金求める意向
山上徹也容疑者は現在、犯行時の精神状態を調べる鑑定留置中で、取り調べは中断されている。これまで、母親による多額の献金で恨んでいた世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と安倍晋三元首相がつながっていると思い狙ったなどと供述しており、奈良県警が裏付けを進めている。
山上容疑者の伯父などによると、母親は平成3年ごろ旧統一教会に入信。総額約1億円を献金し、一家は困窮を続けた。山上容疑者は母親が多額の献金を繰り返した旧統一教会への恨みが今回の動機だと供述。当初は教団トップを狙ったが、安倍氏が昨年9月に開かれた教団の友好団体のイベントにビデオメッセージを寄せたことを機に、標的を安倍氏に切り変えたと説明している。
山上容疑者は、鑑定留置のため期限の11月29日まで勾留が停止されている。捜査当局は期限終了後に山上容疑者の聴取を再開し、鑑定結果も踏まえて起訴するかどうかを判断する。
一方、山上容疑者の母親は、事件直後から伯父宅に身を寄せていたが、8月上旬に「世間に謝罪したい」と伯父のもとを離れた。以降、教団関係者と行動をともにしているとみられる。謝罪文の公表などを模索しているというが、実現には至っていない。
教団への献金約1億円のうち約5千万円は事件前に一家へ返還されたが、伯父は残る約5千万円の返金を教団側に求める意向を示している。伯父は取材に「教団側がどう動くか分からないが、残された(山上容疑者の)妹のためにも、今後話を進めたい」と述べた。




