高齢者ワクチン 接種券「分散発送」が一転 埼玉の自治体困惑「国に従ったのに」
新型コロナウイルスの高齢者向けワクチン接種をめぐり、予約の集中を避けるために接種券の発送時期を分散させてきた自治体が、その方式を改めるケースが相次いでいる。国などが開設する集団接種会場の予約に接種券が必要となり、住民から早期の発送を求める声が寄せられているためだ。接種券の「分散発送」は政府が促していた経緯があり、転換を余儀なくされた自治体側は困惑を深めている。
高齢者向けのワクチン接種業務は原則として市町村が担うことになっている。ただ、接種を加速させるためには市町村の業務を補完する取り組みが必要という判断から、国は、東京都などで自衛隊運営の大規模接種センターを稼働させる予定だ。埼玉県も大規模接種会場「県高齢者ワクチン接種センター」の運用を6月に開始する。
これらの会場での接種では、居住市町村から接種券が届いていることが予約の条件となる。ただ、多くの自治体が接種券の発送時期を分散させた結果、現時点で手元に接種券が届いていない高齢者も少なくない。
埼玉県入間市は、年齢の高い人から順に接種券の発送を進めてきたが、国や県による接種会場の設置を受け、5月31日に予定していた65~69歳の約9900人への接種券発送を、急遽(きゅうきょ)、26日に前倒しすることを迫られた。同県川越市も、高齢者から「県の接種センターで予約したいから早く接種券を送ってほしい」という電話が殺到したため、65~74歳の人への接種券発送の時期を早めた。
前倒しを模索したものの、市の予約システムがパンクしかねないという事情から、「希望者に限って接種券を早めに送る」という方式を採用した同県白岡市のようなケースもある。
そもそも、分散発送は、「予約業務が混乱しないよう段階的に発送してほしい」(河野太郎ワクチン担当相)という政府の呼び掛けを受けて講じていた方式だ。国の「お触れ」に従ってきた自治体関係者の間に戸惑いが広がるのも無理はない。
川越市の幹部は「国の要請に従って接種券の発送計画を策定したのに、たった1カ月で練り直しを迫られた。ただでさえ疲弊しているのだから振り回さないでほしい」。埼玉県西部の市長は「接種の機会が増えるのは歓迎したいが、事前に市町村と擦り合わせてくれないと現場が混乱する」と苦言を口にした。(竹之内秀介)