主張

米弾劾訴追調査 混乱排し対外責任果たせ

 米下院民主党がトランプ大統領の弾劾訴追に向けた調査を始めた。

 トランプ氏はウクライナのゼレンスキー大統領に、民主党のバイデン前副大統領の疑惑に関する調査をするよう電話で圧力をかけたとされる。

 疑惑の解明次第では、来年の大統領選で有力候補のバイデン氏にも矛先が向かうリスクをはらむ。内政が混乱すれば対外政策に影を落とすのは必至だ。

 国際社会は米中貿易摩擦で不安定感が増す一方、北朝鮮やイランの核開発など取り組むべき課題は多い。米議会には、大統領選を前にした政争ありきではなく、分別ある真相の究明を求めたい。

 トランプ氏は7月にゼレンスキー氏に電話で、来年の有力候補であるバイデン氏の息子、ハンター・バイデン氏をめぐる問題について調査を依頼した。バイデン氏はオバマ前政権の2016年、ウクライナの検事総長を解任するよう圧力をかけた疑いが持たれている。検事総長は、ハンター氏が役員を務めていた同国ガス会社の捜査を統括する立場にあった。辞任後に捜査は打ち切られている。

 問題なのは、トランプ氏が軍事支援と引き換えに調査を行うようゼレンスキー氏に圧力をかけた疑いが持たれている点だ。もし事実なら、権力の乱用との誹(そし)りは免れまい。電話会談の記録を通常より機密性の高いシステムに移管したとの隠蔽(いんぺい)疑惑も浮上している。

 ウクライナは14年、ロシアによるクリミア半島併合後、欧米から軍事、経済両面の援助で支えられている。そんな弱みにトランプ氏がつけ込んだとすれば、ロシアを喜ばせるだけの外交圧力とみられても仕方なかろう。

 大統領罷免には上院の3分の2の賛成が必要で、そのハードルは高い。戦後、罷免された大統領はいない。だが、調査の過程で新たな問題が明らかになる可能性もある。トランプ氏が潔癖だというのなら、自らの言行で疑惑を晴らす努力をすべきである。

 米国は自由や民主主義という普遍的価値をロシアや中国の挑戦から守る責務を持つ。そうした米国の対外政策は日本を含むアジアの安全保障に重大な意味がある。

 北朝鮮が潜水艦発射弾道ミサイルを発射しても、米国内の報道は弾劾調査の話題で持ちきりだ。国際社会の平和と安定に対する米大統領と議会の責任は重い。

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