メス1匹で繁殖する侵略外来ザリガニ襲来 特定外来に指定も環境省が危惧する定着の可能性

メスだけで繁殖する「ミステリークレイフィッシュ」(愛媛県生物多様性センター提供)

メスだけで繁殖する外来種のザリガニ「ミステリークレイフィッシュ」が5~6月、松山市の泉で見つかった。〝先輩格〟のアメリカザリガニと同様、生態系に重大な影響を及ぼす恐れがあるミステリークレイフィッシュのメスは1度に400個の卵を産み、1匹でも野外に入り込むと短期間で繁殖する可能性がある。国内ではまだ駆除方法が確立されておらず、初めて定着が確認された那覇市は対応に苦慮している状況だ。環境省は第2のアメリカザリガニにならないよう野外への放出などに注意を呼びかけている。

見つからない〝謎〟

ミステリークレイフィッシュは原産地不明のザリガニで、米国のフロリダ半島に生息するアメリカザリガニの仲間のスロウザリガニが突然変異したものとみられている。メス単体で卵を産み増殖する単為生殖が最大の特徴。体長は6~10センチ程度で寿命は2~5年ほど。池や川、用水路などに生息し藻や水草、小動物などを食べるとされる。

今回松山で見つかったのは計3匹で、市民が5月31日にメス2匹を発見した。場所は平成28年にも1匹が見つかっていた泉だった。ただ今回までの9年間に目撃情報はなく、通報を受けた県生物多様性センターは定着している可能性もあるとみて6月3日に現地調査を行ったが、他に見つかったのは1匹のみ。同センターの村上裕上席研究員は「9年前の個体の子孫なら、もう少し見つかってもいいはず。ミステリーだ」と不思議がる。

9年ぶりにミステリークレイフィッシュが見つかった松山市の泉。近くには注意喚起の看板が立てられている(前川康二撮影)

環境省専門家会議の資料などによると、1990年代にドイツへ持ち込まれ、ペットとして飼われていたものが野外に放出された。ドイツやオランダでは自然環境での増殖が確認され、マダガスカルでは食用として持ち込まれて野生化。水田や水路、養殖池などで繁殖し、多様な小動物を捕食したり、水草を切断したりするなどして生態系に大きな影響が出ている。

白斑病を媒介するため在来種の甲殻類やエビ・カニ類の養殖に深刻な影響を及ぼす恐れもあり、欧州では在来種のザリガニが激減したという。

対策は手探り状態

単為生殖という珍しさが人気を集め、国内でもペットとして一時、1匹500~千円程度で販売されていた。松山市に先立ち、北海道では平成18年に野外で見つかり、環境省は海外の事例も踏まえ、定着すれば駆除が困難なことや固有種のニホンザリガニに壊滅的な影響を与える恐れがあることから、令和2年に「特定外来生物」に指定。飼育や輸入、譲渡、放出などを原則禁止とした。

アメリカザリガニはウシガエルのエサとして昭和初期に移入されてから約90年間で、北海道から南西諸島までの全国に分布を拡大した。近年では各地でトンボ類や地域固有の水生昆虫、水草などへの害が目立ち、水域の汚濁化も含めて深刻な環境問題になっている。

環境省がアメリカザリガニの二の舞とならないよう注意喚起や情報提供の呼びかけを行う中、昨年8月に国内で初めて定着と疑われる事例が那覇市の天久ちゅらまち公園の人工池で確認された。

市民が7匹を発見し、環境省沖縄奄美自然環境事務所に通報。担当者が確認したところ、特有のマーブル模様や全てメスだったことなどからミステリークレイフィッシュと特定。全て成体だったため、国内初の定着の可能性があると判断した。

ミステリークレイフィッシュが定着している恐れのある天久ちゅらまち公園の人工池。周りはネットで覆わ立ち入り禁止となっている=那覇市(同市提供)

池を立ち入り禁止にするとともに、池を囲うネットを設置。今年3月に池の清掃をしたところ新たに数匹が捕獲された。同事務所の担当者は「どのぐらいの数がいるかは分からない」と話す。

国内で初めての事例だけに、対策も手探りの状態だ。池を管理する市は今年度中の駆除に向けて池を埋めたり、水を抜くなどの方法を検討しているが、水を抜くと池の外に逃げてしまう恐れもあり、担当者は「慎重に対応する必要がある。関係者と駆除方法を協議している段階だ」と明かす。

松山市でも定着の可能性が高まれば那覇市と同様、対応に苦慮することとなる。ただ6月3日以降に新たな個体は見つかっておらず、数件あった通報も確認すると全てアメリカザリガニだった。

村上研究員は「繁殖しやすい環境や野生下での生態などはまだまだ分かっておらず、人間が気づかないほどの薄い密度で定着している可能性も否定できない。アメリカザリガニと間違えて繁殖を見落としているかもしれない」と警戒を強めている。(前川康二)

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