「夢を実現」京都で19歳市バス運転手誕生 人手不足が加速する運輸業界に新風巻き起こす

京都市バスで最年少デビューした運転手の中出丈さん=京都市伏見区

再燃するオーバーツーリズム(観光公害)対策など、何かと話題な京都市バスで今年2月、19歳のドライバーがデビューした。大型2種免許の取得条件緩和などに後押しされ、中学生のときからの夢を実現させた。一方、新型コロナウイルス禍を機に業界では人手不足が深刻な問題となり、路線の減便や廃止が各地で相次ぐ。「次は夢を与えられる人に」。逆風のバス業界に久しぶりに明るいニュースが届いた。

「車内が揺れすぎないように運転に気を付けている。お客さんが心地よく乗れるように頑張りたいです」。ハンドルを握る中出丈(じょう)さん(19)=京都府向日市=は、デビューからの激動の約1カ月を振り返った。

高校在学中に普通運転免許を取得し、昨年11月にタクシーや観光バスなどを運営するMKグループ(京都市)に入社。同社は京都市交通局の一部路線バスの管理を委託されており、JR京都駅前から東寺方面を周回するルートなど4路線を担当することになった。特に市内は交通量も信号も多く、「定刻で走ることは難しいが、経験を積んでいきたい」と力を込める。

4年の道交法改正で10代も免許取得

10代のバス運転手誕生の背景にあるのは、バスの運転に必要な大型2種免許の取得条件の緩和だ。令和4年5月に道交法改正で、これまでは「21歳以上でかつ普通免許取得3年以上」だった条件が、特別講習を受ければ「19歳以上で普通免許取得1年以上」に変わった。

中出さんがバス運転手を志したきっかけは、中学3年の修学旅行で乗車した観光バス。地元の京都を出発し長野県へ向かう約6時間、「気づかないうちに眠ってしまうくらい、乗り心地が良かった。運転手のテクニックを実感し、かっこいいと思った」。幼いころから車が好きで、大きなトラックなどを乗りこなす運転手への憧れもあったが、こうした体験が決め手となり、バスの運転手を目指すようになった。

市バス路線で経験を積み、いずれは観光バスの運転手になりたいと考えている。19歳のドライバー誕生は交流サイト(SNS)で話題となり、MKグループには「頑張ってほしい」「頼もしい」といった声が寄せられている。中出さんは「遠足、修学旅行の小中学生を乗せてみたい」と意欲的だ。

働き方改革でより多くの運転者が必要に

一方、業界を巡る逆風は強い。日本バス協会(東京)の昨年9月の調査によると、コロナ禍でのバス減便などを受けて、バス運転者数は著しい減少傾向にある。今年4月からは働き方改革として改正「改善基準告示」が施行され、必要な休憩時間が延びるなどするため、輸送規模の維持にはより多くの運転者が必要だ。

今後運転者が十分に確保できなかった場合、令和4年で約7千人とされた運転者の不足数は、12年には約3万6千人にまで達するとの推計がある。人手不足が進めば、さらなる路線バスの減便や廃止は避けられない。業界では自社養成制度の推進など運転者確保に向けた取り組みが進む。

「乗り心地や乗客への接し方で、自分が憧れたように『バスの運転手の仕事がかっこいい』と思ってもらいたいです」と中出さん。19歳の船出を多くの関係者が見守っている。(堀口明里)

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