よく似たお菓子、サヴァランとババ。日本ではサヴァランがポピュラーですが、パリではその原形の素朴なババをよく見かけます。
焼き上げたブリオッシュ生地に洋酒入りのシロップをしみ込ませたババは、元ポーランド王で仏北東部ロレーヌ地方も治めたスタニスラス・レクチンスキー公のアイデアだったと伝わります。かたくなったパン菓子にお酒をかけて食べたら大変に美味だったので、それをヒントにお抱えパティシエのストレールに考案させたとか。公が愛読していた『千夜一夜物語』にちなんで、アリババと名付けられたそうです。
その後、アリババはババの名で各地に広まり、現在ではパリのビストロの定番デザートです。一方で、1730年にストレールがパリで興した同名の菓子店では、彼の思いを継いで、今もアリババとして売られています。
このババを、1840年代にパリでパティスリーを営んでいたジュリアン兄弟が、より洗練させて売り出したのが「サヴァラン」。その名は、敬愛する法律家で美食家のブリア・サヴァランにあやかったものでした。彼の名著『味覚の生理学』には、こんな有名な一節があります。
「君の食べているものを言ってごらん。君がどういう人物か当ててあげよう」
◇
■プロフィル
大森由紀子(おおもり・ゆきこ) フランス菓子・料理研究家。学習院大卒。パリの調理製菓専門学校「ル・コルドン・ブルー」で学ぶ。料理教室や著書、講演などを通じてフランス伝統菓子の魅力を伝え続けている。2016年にはフランス農事功労章シュバリエ勲章を受けた。




