台風13号の接近に伴う大雨では、千葉県の市原市と大多喜町を流れる養老川が氾濫した。養老渓谷観光協会によると、この影響で、紅葉の名所として知られる養老渓谷の周辺にある9軒の宿泊施設のうち7軒が浸水や土砂流入などの被害に遭った。同協会によると、これだけの規模の大雨被害は昭和45年以来53年ぶりという。多くの観光客が訪れる秋の行楽シーズンを前に、関係者は肩を落としている。
改装したばかり…ことごとく泥まみれ
市原市戸面(とづら)の旅館「喜代元」では、すぐ近くを流れる養老川の氾濫で、1階の事務所や宴会場などに水が流れ込んだ。水が引いた後に確かめると、事務所では備品などが散乱し、ことごとく泥まみれになっていた。宴会場も、新型コロナウイルス禍で利用機会が減ったカラオケを撤去して飲食スペースを広くするなど、昨年秋に改装したばかりだったが、浸水被害を免れなかった。
養老渓谷の紅葉は例年、11月下旬から12月上旬が見頃。喜代元は地元消防団などの協力も得て、連日片付けに追われているが、代表の秋葉保雄さん(64)は「秋までに復旧はできない」と語る。「(行政が)道路を変えたり塀を高くしたりするなどと言わないと、頑張れない。いまの異常気象を考えると、先も読めないので、どうするものか」と頭を抱えた。
「水にはあらがえない」
喜代元から約400メートルほど離れた場所にある、大多喜町葛藤(くずふじ)の旅館「嵯峨和」でも、養老川の氾濫によって館内は50~60センチ程度の高さまで浸水被害を受けた。2日ほどかけて泥のかき出しなどに当たったが、15件ほど入っていた宿泊予約は急遽(きゅうきょ)、キャンセルを迫られた。
現在は予約の受け付けを再開しているが、これまでにキャンセルの申し出も増えており、おかみの佐川玲子さん(68)は「(宿泊客数は)安定はしないと思う」と打ち明ける。「浸水被害を受けたのは初めて。水にはあらがえない。『もしも』のときに備えて対策をしなければ」
年内予約すべてキャンセル
土日・祝日や大型連休などに限って営業するキャンプ場「奥養老ヴィレッジ」(市原市戸面)は、キャンプ場の被害はなかったものの、場内に出入りするための橋が流されてキャンプ場に入れなくなり、今年12月まで入っていた予約はすべてキャンセル。新規の予約受け付けも停止している。
4年前の令和元年房総半島台風でも被害を受けて営業停止を余儀なくされ、名称を奥養老バンガロー村から奥養老ヴィレッジに変更して令和3年にリニューアルオープンした経緯がある。代表の三瓶貴司さん(47)は「秋はお客さんも多いので(営業ができないことは)痛いが、どうしようもない。同じ橋をつくっても、また流されてしまう」と悩みを打ち明けた。
養老渓谷で名瀑として知られる「粟又(あわまた)の滝」は、台風13号の影響で崩落の危険性があるとして、安全が確認できるまで立ち入り禁止となった。近くの飲食店で働いている40代女性は「雨はそれほどでもなかったが、上流から土砂が流れてきて店も少し浸水した。道がえぐれて滝も崩れていたり、以前は見えていなかった岩が見えたりしていた」と状況を振り返った。




