9月27日に行われた安倍晋三元首相の国葬(国葬儀)に合わせ、山上徹也容疑者(42)=殺人容疑で送検、鑑定留置中=をモデルにした映画「REVOLUTION+1」の特別編が各地で上映された。監督は日本赤軍の元メンバー。制作側は「映画は表現の自由の最前線」と意義を訴えるが、内容や公開のタイミングに「テロの正当化」「遺族感情を踏みにじる」といった批判が噴出している。抗議が相次ぎ、上映を中止した映画館もある。
28日夜、大阪市中央区のライブハウス「ロフトプラスワン・ウエスト」で行われた上映会。すでにチケットは完売し、会場は約130人の観客で満員となっていた。
映画は山上容疑者をモデルにした「川上」が主人公。川上の母親が、旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)にのめり込んで家族が崩壊していく半生や、銃を自作して事件を起こすまでの経緯を、フィクションや安倍氏が銃撃された実際の映像などを交えて描いた。
監督を務めたのは日本赤軍元メンバーの足立正生氏(83)。8月下旬から9月上旬にかけて撮影したという。
本編の公開は年末以降の見込みだが、国葬に合わせて各地のミニシアターなどで公開されたのは約50分の特別編。映画を見た大阪府枚方市の大学講師の女性(51)は「国葬賛成派の人にも見てもらいたい」と話した。
ただ事件の捜査が続く中、内容だけでなく、国葬に合わせたとする公開のタイミングに違和感を抱く人も少なくない。交流サイト(SNS)上には「テロを正当化するな」「国葬の日に公開は遺族に失礼だ」との声も上がっている。
「テロを容認するのか」。鹿児島市の映画館「ガーデンズシネマ」には、こうした抗議のメールや電話が相次ぎ、29日の上映会が中止となった。ガーデンズシネマ側は入居する商業施設にも抗議が寄せられていると明かし、「お客さまの安全を第一にということで中止の判断に至った」とした。