年が改まり、連載も心機一転のスタートとなった。棋士の食事などをテーマにした「棋食徒然」から趣向を変え、今回から小説などの食事描写について書かせていただく。タイトルは「食読草紙」。読者諸賢には、いましばしお付き合い願いたい。
対局中の棋士の食事が「将棋めし」として注目を集めるなど、本邦では人々の食文化に対する関心が高い。それもあってか、最近、食をテーマにした小説や漫画が数多く出版されている。こうした作品が人気を集めるのは、古今東西、食にまつわる場面描写の蓄積によるところが大きいだろう。
小説の食事描写については、まず時代小説の名手、池波正太郎(1923~1990年)を抜きにして語ることはできない。ご本人も食道楽として有名だが、『鬼平犯科帳』や『仕掛人・藤枝梅安』など手掛けた小説にも多くの食事場面が出てくることで知られる。その描写は美味しそうな食事そのものに注目するだけではなく、登場人物がどういったものを食べるのかを描くことで、その人物の人間性や日常を浮き彫りにし、読者に強く印象づけている。
