1905年は、物理学の「奇跡の年」と呼ばれている。アインシュタインが、「相対性理論」など革命的な論文を立て続けに発表した1年だからだ。当時、彼はスイスの首都ベルンの特許局で働いていた。
▼「奇跡の論文」が出た後、ベルン大学に新設された理論物理学の教授のポストに、自分を売り込んだものの断られる。論文の内容が審査員には理解できず、提出書類にも不備があった。翌年の再申請で、ようやく新しい職場を確保する。木原武一さんの『アインシュタインの就職願書』によれば、他の多くの偉人も就職には苦労したらしい。
▼ゼログラフィー(電子写真法)を発明したカールソンは大学卒業後、就職申込書を82通も送った。返事が来たのはわずか2社だ。「音楽の父」バッハも生前は、作曲家として評価されず、宮廷や教会になかなか雇ってもらえなかった。
▼平成27年春に卒業予定の大学生の就職・採用活動が、1日から解禁された。景気回復を受けて、企業の採用意欲は確実に高まっている。ただ、大手企業の「量より質」という採用方針には変わりがない。多くの内定を勝ち取る学生と、そうでない学生の「二極化」がますます進むとの指摘もある。
▼インターネットにあふれる情報に一喜一憂し、自分を見失ってしまいがちだ。そんな悩み多き若者に、過去の偉人の苦労を伝えても、大した慰めにはならないかもしれない。
▼ならば同時代のカリスマ、作家の林真理子さんに登場を願おう。かつて就職活動で、試験を受けた四十数社全部から不採用通知を受け取った。それをリボンで結び宝物にして、「懐かしく眺める日」を楽しみにしていた、と近著にある。こんな大胆不敵な人材こそ、今求められているに違いない。



