【知事が振り返る震災10年】(上) 宮城・村井嘉浩知事「復興を終えることは天命」
東日本大震災の発生から11日で10年を迎えるのを前に、宮城、岩手、福島の被災3県の知事が産経新聞のインタビューに応じた。復興までの軌跡を振り返るとともに、今後の課題などについて聞いた。
--東日本大震災の発生から10年
「被災者の生活再建を最優先にしてきた。震災直後に被災地を訪問し、避難所で被災者から泣きながら『助けてください』といわれ、復興を終えることが自分の天命だと思った。災害公営住宅や防潮堤、道路の整備などハード面はイメージした形になった」
--復興での課題は
「ソフト面がまだまだ追い付いていない。被災者の心のケアや不登校、新しい住まいでのコミュニティーの問題などが残されている。もう少し長いスパンで考えていく必要がある」
--新型コロナウイルスの感染拡大は、復興にどう影響したか
「経済的な復興がいい感じで伸びてきたときに、外出自粛や休業要請に伴う消費低迷、観光客の減少や大型イベントの中止により大きなダメージを受けた」
--回復に向けては
「今は新型コロナを押さえ込むことに専心努力をするべきだ。その先については早め早めに手を打つことが重要だ。仙台空港の(運用)24時間化で、コロナ収束後に一気に観光客の回復が見込めるような環境をつくった」
--東京電力福島第1原発事故に伴う放射能濃度が国の基準(1キログラム当たり8千ベクレル)を超える指定廃棄物の問題は
「国の基準以下の汚染廃棄物の処理にめどがたった段階で、指定廃棄物の中で(放射能濃度が低下して)基準以下になった汚染廃棄物をどうするか、市町村長と話し合って方針を決めたい。汚染廃棄物の問題が解決しないと復興は終わったことにならない」
--水素エネルギーの利活用推進など「創造的な復興」を進めてきた
「10年先を見据えて施策を打ってきた。水素エネルギーは、県内では(水素を燃料とする)燃料電池車(FCV)の数も増え、(燃料を供給する)『商用水素ステーション』も2基目の整備が進むなど水素社会に向けた取り組みはしだいに広がっている」
--これからの被災地の姿はどうあるべきか
「10年たつと、震災の風化が進む。だから被災者には『自分の足で立ち上がるようになってほしい』といい続けた。県は側面からサポートするのが、これからの望ましい姿だ。ただ、何もしなければ沿岸部の人口はどんどん減る。仙台空港に国内外から多くの人を呼び寄せ、沿岸部の交流人口を増やすことで定住人口の減少を補いたい」
(石崎慶一、写真も)