名古屋が「地盤沈下」の憂き目に遭っているという。とはいっても、スポーツ界の地盤沈下のことである。サッカーJリーグでは名古屋グランパスがJ2への降格が決定。1993年のJリーグ発足から一度も降格したことがなかった名門クラブの「落日」に地元では痛烈なブーイングが起きたという。一方、今季、最下位に甘んじた中日ドラゴンズも球団内は一枚岩とはいえず、来季、チームを再建できる保証はどこにもない。中部圏エリアのスポーツ熱が一気に冷めていくことはないだろうが、不幸は得てして重なるものである。
11月3日の文化の日、パロマ瑞穂スタジアム(名古屋市瑞穂区)で行われたJ1第2ステージ最終節。名古屋は湘南にホームで1-3で敗れて年間16位が決定、初のJ2降格という屈辱を受け入れる日が訪れた。
残留か降格かの運命を懸けたこの一戦、敗戦濃厚の後半にスタジアム内に「怒号」が飛び交っていたという。試合終了のホイッスルが鳴ると、スタジアムは一瞬、静まりかえり、サポーターの間に落胆のため息がもれた。第2ステージ終盤で息を吹き返し、下馬評でも名古屋のJ2降格の可能性は低いと見られていただけに、ファンにとっても信じがたい現実だった。かつて「不動の守護神」といわれた楢崎正剛も40歳に。試合後、無念の表情を浮かべながら、「自分たちの力のなさを悔やむばかり」と言葉少なに語った。
1994年、巨人と中日が同率首位で並び、最終戦で直接対決した「10・8決戦」(ナゴヤ球場、巨人が6-3で勝利)同様、名古屋市民にとって「11・3」は「瑞穂の悲劇」として刻まれることになりそうだ。
一方、今季、19年ぶりの最下位に終わった中日に対して、地元ファンは球団への不信感を募らせ、しらけムードでいる。来季、指揮をとる森繁和新監督は代行から昇格した。白井文吾オーナーと会談した際に「先のことを怖がらず、思い切った野球をしていく」と決意を語ったが、裏を返せば、今季は先のことを怖がり、おそるおそる野球をしていたことにも映る。
地理的に名古屋は東京と大阪のほぼ中間に位置しており、よく言われるのが「東京と大阪を足して2で割った」のが名古屋人気質だという。プロ野球においても虎党にみられる熱狂的な応援は少なく、今季、中日が最下位に決定しても暴徒化するようなファンはいなかった。最下位を冷静に受け止めているファンもいるようだ。
通称「ドラグラ」(中日ドラゴンズと名古屋グランパス)の今季の体たらくをファンはどう感じたのだろうか。名古屋近郊に住む「ドラグラ」事情通は「どちらの球団も人材のなさが露呈したことが『降格』と『最下位』という結果に表れた。もともと、名門・名古屋の監督に実績も手腕もない小倉隆史氏を知名度だけで据えたこと自体、無理があった。一方、中日は監督の采配うんぬんではなく、GM落合博満氏が空中分解の主因だったようにも思う。土地柄的にモノ作りはうまいが、人づくり、プロスポーツの運営能力はない。まじめで質実剛健の県民性が知られるが、広い意味でのスポーツ音痴の県民気質がある」と話す。
ところで、今年誕生したプロバスケットボール、Bリーグの最高峰・1部チームが愛知県内に3球団もあるのをご存じか(東京にもB1は2チームしかない)。もともと、歴史がある実業団の名門だそうだが、地域バランスを考慮すると果たして適性の数なのか。近い将来、収斂していく議論は出てきそうだ。
プロ野球にサッカーJリーグ、そしてバスケのプロ集団まで誕生し、今のところ活況を呈しているが、限られたパイを奪い合う構図だとしたら先行きは暗い。東京、大阪に次ぐ大都市圏とはいえ、ファンを新たに開拓する戦略と展望がなければ共倒れになっても不思議ではない。




