東京五輪逃したマラソン井上大仁、「不屈の物語」の続き

今年の東京マラソンで、26位でゴールした井上=1日、東京都千代田区(奈須稔撮影)

 やれることはやったという感覚だったのだろう。取材エリアに引き上げてきた井上大仁(MHPS)は実にさばさばしていた。

 「腹をくくっていたので悔いはないです。すっきりはしています」

 1日の東京マラソンで2時間9分34秒の26位に終わり、目標としていた東京五輪出場の可能性がついえた。何重もの記者の人垣の先、27歳のこけた頬が見えた。

 井上が五輪代表切符をつかむには、この東京マラソンを最低でも2時間5分49秒以内で走り、日本人最上位になることが求められていた。

 スタート直後から先頭集団でレースを進めたのは覚悟の表れだった。中間点の通過は1時間1分59秒。これは日本記録が出た18年東京の設楽悠太(ホンダ)の1時間2分43秒、同年シカゴの大迫傑(ナイキ)の1時間3分4秒を上回るハイペースだった。

 「自信はあったので(先頭に)付いていく気持ちはありました。行けるところまで行くしかないと」。

 吹っ切れていた、と言っていいかもしれない。

 井上は1学年上の大迫や設楽悠のように早くから注目を集めた選手ではない。長崎・鎮西学院高、山梨学院大と泥臭く練習を重ね、キャリアを築いてきた選手だ。

 2018年の東京マラソンで当時日本歴代4位となる2時間6分54秒をマーク。同年ジャカルタ・アジア大会で金メダルに輝いた。だが、昨年9月の東京五輪代表選考レース「マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)」は本命の1人に数えられながら、完走者中最下位の27位に沈んでしまう。気負いがあったか。練習も本番も今ひとつ、体が動かなかったという。

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