韓国ソウル郊外の京畿道(キョンギド)議会に提出された、いわゆる戦犯ステッカー条例案。戦時中に朝鮮半島から労働者を徴用した日本企業を戦犯企業とみなし、これらの企業の製品であることを示すステッカーの貼付を道内の学校の備品に義務づけるという内容だ。結局、世論の反対が多く、審議保留となった。
条例案は京畿道議会(議員数142人)の27人(与党「共に民主党」25人、野党「自由韓国党」1人、野党「正義党」1人)が今月15日付で発議した。
当初、29日の議会委員会で条例案が審議される予定だったが、代表で発議した与党議員が28日、「社会的合意を経た後、条例審議を改めて準備する」との意向を示し、審議は見送られた。
条例案に対しては、道教育庁が戦犯企業に関する明確な定義や法的根拠がなく、混乱をもたらす恐れがあるなどとして反対していたほか、外相が懸念を表明するなど政府内からも慎重論が出ていた。
聯合ニュースによると、条例案提出後、黄氏のもとにはさまざま意見が寄せられたという。ある青年は「悪化した日韓関係の下、日本で誠実に努力している在日や韓国の企業、韓国内の戦犯企業の子会社、そして日本で就職しようと準備している学生たちが受ける被害を察してほしい」と訴えた。また、「子供たちに復讐(ふくしゅう)心と偏向した歴史観を教育しかねない」と反対の声を挙げる教師もいたという。
京畿道の公式ホームページの投稿欄にも、戦犯ステッカー条例案を批判する道民の声が殺到していた。
「過剰なナショナリズム…戦犯ステッカーなんて本当に幼稚で恥ずかしさの余り顔が赤くなる」
「実に情けない京畿道議会」
「幼稚な愛国主義で日本に勝つことはできない」
「浦項総合製鉄(現ポスコ)は日本の技術で造られたし、サムスンの半導体の技術も日本が支援してくれた。こんなあほで間抜けな議員らのせいで京畿道に住むのが恥ずかしい」
「戦犯ステッカーを貼付しようというのなら、議員さんたちの家にベタベタと貼りつけよう。子供たちを政治に利用しないでほしい」
また、保守系学生団体「韓国大学生フォーラム」も19日、条例案について「安っぽい民族主義」と非難する論評を発表。「100年前の日本帝国の蛮行と現代日本を区別できず、人気取りのイベント的条例案の乱発が最近続いている」とした上で、「グローバルな市民としての教育を受けて育った現代の世代に、民族主義の注入とはとんでもない」と主張していた。
「イベント的条例案乱発」というのは、京畿道議会のほかに、ソウル市議会でもあった戦犯企業排除の動きを指す。今年1月、ソウル市と市教育庁などが戦犯企業の物品を購入しないよう制限する条例案が市議会に提出されたが、こちらも審議保留となっている。
いずれの条例案も、いわゆる徴用工判決をめぐる日本側の対応に反発して提案されたものだが、もっと根深いところにその背景がある。「積弊清算」を掲げ、歴史の見直しを進める文在寅(ムン・ジェイン)政権に迎合し、与党の地方議員が政治パフォーマンスを行っているとの指摘もある。
今回の戦犯ステッカー騒動は、韓国より日本でのほうが反響が大きかったようだ。京畿道に住む知人に聞いたところ、「一般の市民は関心がないのでは。韓国のマスコミもほとんど報じていないので、うちの家族もその事実すら知らない」と話していた。
日韓間で問題が生じると、かつては韓国のほうが激情して盛り上がり、日本のほうは冷めて冷静にみていることが多かった。それが最近では、今回の騒動を含め逆転。慰安婦問題も、徴用工判決も、韓国の一部の市民団体やマスコミは騒ぐが、一般市民の関心は薄いのが実情だ。
日本の方が熱くなるのは、韓国の執拗(しつよう)な反日攻撃に、今までがまんしていた日本人の堪忍袋の緒がいよいよ切れたのか。それとも韓国の現政権下で増幅する反日が、看過できないほど度を超しているからなのか。
(編集委員 水沼啓子)




