医療現場、迫られる「命の選別」 高齢患者の人工呼吸器、難しい判断

 新型コロナウイルスの第3波の感染拡大に伴い、高齢の入院患者が急増し、医療現場に厳しい判断を突き付けている。重い持病を抱えている場合、コロナの症状悪化が命の危機につながるからだ。医療資源が限られる中、人工呼吸器の装着をめぐる葛藤もあり、診療にあたる医師は「表面化していない軽症・中等症からの重症化例はかなり多い。さらに病床が逼迫(ひっぱく)すれば、『命の選別』を迫られかねない」と苦悩する。

 軽症・中等症用23床と、集中治療室(ICU)の重症用4床の新型コロナ専用病床を備える埼玉医科大総合医療センター(埼玉県川越市)。第3波が訪れた昨年11月中旬ごろから軽症・中等症病床では1人退院するごとに2、3人入院するペースが続き、常に20人前後を受け入れる。大半が60~80代の高齢者だ。

 ICUも4床中3床が埋まった状態で、残る1床は軽症・中等症から容体が急変するのを見越し、空けておかざるを得ない。「認知症の高齢者でケアに手がかかる上、急に酸素投与が必要になるなどいつ重症化するか冷や冷やしながら診ている」。同センター総合診療内科・感染症科の岡秀昭部長はこう打ち明ける。

 重症者の救命には、人工呼吸器や人工心肺装置(ECMO=エクモ)の装着が必要になるが、まずは装着の是非が問われる。「人工呼吸器を着けても、救命率は7~8割程度。病床が逼迫し、スタッフが足りない状況では医療の質を保つことが難しくなり、そうなると3~5割程度に低下するかもしれない」と岡氏は言う。

 コロナ患者の中には、末期がんで余命数カ月と宣告され、実質的に最期を看取(みと)るだけの高齢者もいる。同センターでは、入院時に本人や家族に重症化リスク、死亡・救命率を伝え、人工呼吸器装着の意思を確認する。1回で全てを理解してもらうのは難しく、その後も繰り返し説明するため、スタッフの負担も重い。

 最近直面したのが、中等症だった肺炎が重症化したコロナ患者が人工呼吸器の装着を望まず、最期に敗血症という別の感染症を併発したケースだ。意識レベルも非常に悪く、医師の経験値からも救命が困難だと判断された。家族にその旨を話し、鎮静剤や症状を和らげる投薬だけの緩和治療を行い、亡くなるまでの経過を自然に見守った。

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