ここでご紹介した「アイス太郎」を覚えている奇特なお方はいらっしゃるだろうか。
〝逆さまになった三角コーン付きの溶けかけアイスクリームを被(かぶ)っている、笑顔のトビウオ〟。正確に描写すると逆に混乱が広がっていく、そんな刺繍(ししゅう)をスカート部分に配したワンピースである(全長40センチと巨大で、太い糸で刺繍されているという主張の強さ)。これが友人の子供たちに人気で、会うときにリクエストを受けてよく着ていった。
そんなアイス太郎が長年の活躍を終え引退することになり(怪しいトートバッグに変身予定)、私は次なる「ツッコミ服」を探すことにした。
私はたまに「ぱっと見普通なのによく見るとすごく変な服」が着たくなる。ツッコミ気質ではない人でもついツッコんでしまうような、そんな変な服だ。
私の変な服ジャーニーは、やたらでかい壺(つぼ)がどどんと描かれた、ピンクの綿ニット(古着)から始まった。スタイリストなど服好きの方々には評判良く、落ち着いた服を好まれる方々には不思議そうに「それは何?」と度々ツッコまれる。その際の遠慮なく笑い合える時間が楽しく、こういう服もいいもんだなと癖になったのだ。
しかして後任を探すも、「ぱっと見普通なのによく見るとすごく変な服」は希少だ。太郎の退任が決まってから約1年後、ようやく見つかった。
上質なリブ素材の白いロングスカート。全面に太い線画で山河の風景が描かれ、そこに首の長い草食恐竜(笑顔)が立っている。ただ、首が長すぎてウエスト部分に顔があるので、トップスを着ると顔だけ完全に隠れる、妙な構図。完璧だ。
数カ月かけて入手したそれを、とある知的な会に喜々として着ていった。おしゃれなご婦人と立ち話を始めてすぐ、「あら…?」と反応あり。したり、と上着をまくって恐竜のニッコリ顔をご開帳。
「まぁっ! これ恐竜? はぁ~。正規に販売しているお洋服なの? あなたがマジックで描いてらっしゃるの?」
こんなすてきな方から、好奇心あふれる笑顔で矢継ぎ早の疑問系ツッコミ…。私にとってはうれしい瞬間である。
「いえ、私の落書きじゃなくて売ってたんですよ。しかも結構いいお値段で、渋沢さんが2人飛んでいきまして…」
その後も会話が弾み、恐竜服はギリシャ語で「ものすごい」意味の「デイノス君」と相なった。




