38人が犠牲となった熊本地震は28日で発生から1カ月となった。平穏な日常生活や大切な家族を突然奪われた遺族や、友人らの悲しみは今も癒えない。
「ご飯を食べていても、寝ようとしても思い出す」。最大震度6強を観測した熊本県八代(やつしろ)市で倒壊家屋の中から見つかり、死亡した90代男性の友人で理容店主の久保和男さん(85)はこう話す。
男性とは20年来の付き合い。地震から2日後の7月30日、倒壊した家屋から見つかった。家の崩れ方がひどく、余震も続く中で消防隊員もすぐに奥まで入り込めなかったという。どれだけ苦しかったか。「早く助けたかった」と肩を震わせる。
「気さくな人柄でみんなから慕われていた」という男性。お酒が大好きで、お互いの自宅に招きあって朝まで飲むこともあった。
最近は腰を痛めて歩行が難しくなり、一日のほとんどをベッドで過ごしていたそうだが、それでも月に一度、子供が押す車いすで来店し、身なりを整えることを楽しみにしてくれていた。ベッドに横になりながら、テレビで時代劇をみるのが好きだといっていた。「地震の時もベッドでゆっくりしてたんだろう」。
男性の自宅は今も地震直後の状態のまま。見るたびに助かってほしかったと強く思い、悲しみがこみ上げてきた。
地震発生から2週間後、ようやく気持ちに折り合いがつき、自宅跡へ線香を手向けに足を運んだという。「いままでありがとう。これからはゆっくりして。またすぐに会えますから」。こう声をかけた。(鈴木源也、藤澤拓光)




