「バレンタイン時期にはたくさん使えるのですが夏場はどうしても弱い。季節を問わず安定したカカオの使い道を模索しています」
カカオティエの萩森祐介さん(30)はカカオの産地の一つ、南米・コロンビアの取引業者から直接カカオ豆を仕入れ、工房兼店舗「モンプチ ヴィア カカオ」(大阪市北区)でチョコレート菓子などを製造販売している。
チョコの主原料となるカカオ豆(種)は現地で発酵して乾燥させたものだが「もともとは果物なので、フルーティーな風味を大事にしている」というのが萩森さんのこだわりだ。
これはチョコに限ったことではない。冬場はチョコ菓子を中心に手がけるが、溶けやすくて需要が少ない夏場はチョコ菓子は作らず、カカオを使ったカレーやドリンク、おばんざいなどを提供。店を構えて7年目となる今年は、ジェラートの販売も始めた。
日本ではカカオ=チョコの概念があるが「スパイスとしても使えるし、油分が多いのでシチューのような温かい料理に加えると香りが立つ。すりつぶして調味料を加えて肉料理のソースにしたり、実はいろんな使い方ができます」。近年は、カカオポリフェノールによる抗酸化作用にも注目が集まっている。
大阪市内で生まれ育ち、市立(現大阪府立)桜宮高校の体育科に入学。所属したサッカー部では途中からはサポートに回り、キャンプ実習の授業で食事係などを担当。いつしか料理に興味を持つようになった。
授業の一環で、さまざまな分野で活躍する人たちのドキュメンタリー映像を見る機会があり、洋菓子店「パティシエ エス コヤマ」(兵庫県三田市)の創業者、小山進さんや同店のチョコに感銘を受け、当初の体育教師志望から進路を変更。卒業後は2年間で食について幅広く学べる「キャリナリー製菓調理大阪校」(現大阪農業園芸・食テクノロジー専門学校、大阪市西区)に当時あった雑貨・カフェ科へ進んだ。アットホームな雰囲気で、講師との距離も近かったという。
パンや菓子について学ぶ一方、エス コヤマの菓子教室へ通い技術を磨いた。
在学中には京都発のチョコレート専門店「dari K」が主催するスタディーツアーに参加し、東南アジアのカカオ生産地を訪問。華やかなチョコの陰にある児童労働や農家の貧困問題を知って衝撃を受け「価値観が変わる経験になった」と振り返る。
卒業後はdari Kのほか、世界的に有名なパリのチョコブランド「ジャン=ポール・エヴァン」の日本の店舗で実績を積み、令和元年に23歳でカカオティエとして独立した。
「生産者に少しでも還元できたらという思いはあるが、個人店で大きなことができるわけでもない。せめて年中カカオを買い続けられる仕組みを作りたい」
これまでにも商品開発に試行錯誤してきたが、次に挑むのは「栄養価は高いが食材として活用されていない〝外皮〟を使った和菓子」だ。日本ならではのカカオ製品の普及を目指す。(北村博子)
カカオティエになるには
カカオ豆の選定から焙煎、成形までを一貫して手がける職人をカカオティエと呼ぶ。製菓の専門学校などで洋菓子の基礎を学んだ後、チョコレート専門店で実務経験を積み、独立開業や商品開発を目指すのが一般的なルートとなる。





