【ワシントン=大内清】米国務省は28日、管轄下の対外援助機関「国際開発局(USAID)」を解体し、機能の一部を国務省に吸収することを議会に正式通知したと発表した。トランプ政権は、民主主義などの価値観を普及させるのに大きな役割を果たしてきた政府系メディアの解体も進めており、国際的な影響力を誇ってきた「ソフトパワー」の低下は避けられない状況。グローバルサウス(新興・途上国)における中国の影響力拡大に拍車をかけるとの見方が強い。
ルビオ国務長官は28日の声明で、「USAIDは本来の任務から逸脱した結果、得られるものは少なく、コストは高くなりすぎた」と主張。解体に向けた作業を7月1日までに終えるとした。
トランプ大統領は、腹心の大富豪イーロン・マスク氏が主導する「政府効率化省(DOGE)」を通じ、連邦政府の大幅な支出カットや人員削減、機構再編を急スピードで進めている。就任早々の1月には対外援助を凍結。国務省はその後、USAIDの全事業の8割超を打ち切った。
USAIDはケネディ政権下の1961年に成立した対外援助法に基づいて設立され、世界各地で開発援助を実施。冷戦期は旧ソ連の影響力拡大に対抗する役割を、冷戦後は米国が主導する国際秩序の安定化を図る役割を担ってきた。トランプ氏は、USAIDは「腐敗にまみれている」と主張する。
USAID解体の動きに対しては、解雇された職員らから差し止めを求める訴えなどが起こされており、今後も法的な正当性を巡る論議が激しさを増しそうだ。
一方でトランプ政権は、政府系メディアの「ボイス・オブ・アメリカ(VOA)」や「ラジオ自由欧州・ラジオ自由(RFE・RL)」の解体も狙う。
VOAは第二次大戦中の1942年、枢軸国への情報戦の一環で設立された放送局。RFE・RLは、冷戦期に旧ソ連のプロパガンダ(政治宣伝)に対抗する目的で設立され、「鉄のカーテン」の向こう側にニュースや民主的価値観を広げる役割を果たした。いずれも現在は報道の自由が制限された国々や紛争地の報道で存在感を示す。
トランプ氏は3月、これらの政府系メディアを「フェイクニュース機関だ」と呼び、統括する米グローバルメディア局の上級顧問に自身の信奉者である元テレビキャスター、カリ・レーク氏を任命。同局はその後、VOAやRFE・RLへの資金停止やスタッフの解雇などを発表した。
これらの措置を巡っても地裁レベルで差し止めを命じる判断が出ているが、トランプ政権は強硬姿勢を崩していない。
軍事力をはじめとした威圧的手段(ハードパワー)に対し、開発援助や情報発信などによる影響力は「ソフトパワー」と呼ばれる。米外交問題評議会(CFR)のアジア専門家、ジョシュア・クルランツィク氏は2月26日付の論考で、米国の対外支援は「予算全体ではわずかな額だが、(アジアやアフリカの途上国で)しばしば米国のソフトパワーの優位性」に寄与してきたと指摘。ソフトパワー面で米国の後退が続けば、「中国がいっそう付け込むことは疑いがない」と警告した。




