【パリ=三井美奈】ドイツ連邦下院は18日、基本法(憲法に相当)改正案を可決し、メルツ次期首相は国防増強とインフラ整備で大型の財政支出を目指す姿勢を鮮明にした。ドイツが緊縮財政からの脱皮に動き出したことは、欧州連合(EU)が掲げる再軍備計画にも大きな追い風となった。
EUは今月6日の首脳会議で、再軍備計画として8000億ユーロ(約130兆円)の拠出を目指す方針で基本合意した。この大部分はEUの財政規律を緩和して、各国の国防費上積みを目指す内容だった。ドイツが、財政赤字を一時的に膨張させても国防増強を優先する立場に転じたことで、計画実現に弾みがついた。
18日、ベルリンを訪問したマクロン仏大統領は記者団に、「歴史的な採決だった。ドイツ、欧州の双方にとってよいニュースだ。投資を促すことにもなる」と議会の動きをたたえた。北大西洋条約機構(NATO)のルッテ事務総長も、SNSで「NATO防衛力にも大きな変化をもたらす」と歓迎した。ドイツはEUの域内総生産(GDP)の4分の1を占める経済大国で、基本法が改正されれば波及効果は大きい。
メルツ氏は2月の総選挙で保守系、キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)が勝利した後、CDU党首として首相就任を確実にした。CDUは東西冷戦中の西ドイツ時代から、防衛政策で米国との同盟関係を最重視してきたが、メルツ氏は「欧州の結束」優先の方針に転じた。テレビ討論会で、米国は「欧州の運命にあまり興味を持っていない」と述べ、トランプ米政権の「欧州離れ」に警鐘を鳴らした。18日には下院採決を前に、「欧州の防衛体制に向けた最初の一歩」と法案の意義を強調した。
債務ブレーキは2009年、CDU出身のメルケル前首相時代に定められた。財政均衡を重視するドイツの姿勢は、11年に始まったユーロ圏債務危機で貫かれ、EUの緊縮財政に受け継がれた。加盟国の財政赤字の膨張を押さえ、EU全体の財政健全化に貢献する一方、起債を伴う大型投資の足かせにもなってきた。
ドイツの国防費は昨年、GDP比2%。フランスは3~3・5%、英国は3%を長期的目標に掲げる。
CDU・CSUは現在、総選挙で第3党となったショルツ首相の中道左派、社会民主党(SPD)との連立交渉を続けている。メルツ氏は、4月にも新政権を発足させたい構え。




