毎年同じ日時に放送
12月25日の午後3時(日本時間では26日の午前0時)。英国では毎年この日のこの時刻に、エリザベス女王が「クリスマス・メッセージ」を国民に寄せている。
英国王によるメッセージが始まったのは、今から82年前の1932年のこと。女王の祖父ジョージ5世が初めてBBC(英国放送協会)のラジオを通じて国民に語りかけた。国王の声を聴いたのは英国民だけではない。自治領であるカナダやオーストラリア、植民地であるインドや西アフリカにまでその声は伝わった。まだラジオが珍しかった当時でも、2千万人が聴いたとされる。「帝国」の維持に腐心した国王らしい試みであった。
次代のエドワード8世は演説が得意で、王になった暁には「クリスマス・メッセージ」を発するのを楽しみにしていたが、彼が国民にラジオを通じて語りかけた唯一の放送は、皮肉にも「王冠を賭けた恋」により国民に自らの退位を告げたメッセージとなった。
そしてあとを継いだ弟のジョージ6世。映画『英国王のスピーチ』でも描かれているとおり、彼は幼少時から吃音(きつおん)に悩まされ、セラピストのもとに通ってこれを克服した努力家の国王であった。即位からほどなくして英国が加わった第二次世界大戦においても、国王はラジオを通じて国民を励まし、国民とともに戦って勝利を収めた。
大戦中の1940年10月。ドイツ軍による空爆でロンドンが破壊されていたさなかに、国王の長女エリザベスもラジオの子供向け番組で初めて演説を披露した。のちに彼女の秘書官となる人物はこの放送を聴き、「エリザベス2世はラジオの時代の女王として大成功を収めるに違いない」と確信した。王女は当時まだ14歳であった。
