かくとだに えやは伊吹の さしも草 さしも知らじな 燃ゆる思ひを 藤原実方朝臣(ふじわらのさねかたあそん)
百人一首にも歌われている伊吹山(滋賀県米原市、1377メートル)の薬草ヨモギ(さしも草)を使ったバスパック(入浴剤)を地元の高齢者とともに作りたいとクラウドファンディングで資金を募っている「美脚&美尻」専門店経営のエステティシャン、水谷ひでみさん(43)=滋賀県彦根市。「ゆくゆくは、ヨモギのバスパックを米原など湖北地方の特産品にしたい」と意気込んでいる。
生きがい作りにも
40歳でエステサロンを起業し、その中で、フェムテック(女性の健康課題解決)を取り入れるようになった。その一つとして、ヨモギを煎じた蒸気を下半身を中心に体全体に浴び、吸収させる中国の療法「よもぎ蒸し」が女性にとって有効であることを知り、サロンにも導入した。
目を付けたのが、故郷・湖北地方の「伊吹のヨモギ」。約1年間の試行錯誤を経て、伊吹のヨモギで、よもぎ蒸しの草を作った。今回、自宅でも伊吹のヨモギを手軽に取り入れることができるようにバスパックを考案した。
問題は原材料であるヨモギの摘み取り。協力者のヨモギ群生地はあるが、根気のいる作業は1人では限界がある。思いついたのが地元の通所介護事業所「est」(滋賀県米原市顔戸)の高齢者とのコラボだった。
「『できることなんてない』とふさぎ込む高齢者もおられると聞くが、できることがあれば生きがいにもつながる。施設には元気な方が大勢おられ、私にとっては大切な人材です。今回のクラウドファンディングは、伊吹のヨモギの存続・活用と高齢者の生きがい作りという2つを合わせた挑戦です」
37歳で人生の岐路
生まれは滋賀県守山市だが、3歳以降は同県長浜市で育った。高校卒業後は同県内の企業で、主に経理を担当していた。
エステに特別関心があったわけではなかったが、転機があった。
「30代後半はメチャクチャ働いていた。育ち盛りの子供2人をひとりで抱え、月80時間以上の残業は当たり前。そんな37歳のとき、初めてエステに行った。フェイシャル、小顔…変わりました」
ただ、興味を持ったが、エステ通いする時間もない。そこで、技術を自分で身に付けようと、認定資格を取得した。このときに、人生の岐路を迎えた。
「エステの先生に『この先の人生、どうするの』『子供なんて、すぐに大きくなるのよ』といわれた。自分の人生を考え、長男である上の子供が大学に進学したら、エステで起業しようと決意しました」
新型コロナの影響など、想定外の事態はあったが、令和2年9月、出張エステのサロンで起業。同3年3月には長浜に店を開き、今年1月からは、大阪市福島区に「美脚&美尻エステ、全身骨格矯正、フェムケア矯正、伊吹よもぎ蒸し卸」のサロンを開いている。月に2、3回は米原のカフェで全身の骨格矯正やマッサージの出張サロン。エステサロンの学校ではフェムケア矯正の講師も務め、今は多忙を極めている。
豊かな伊吹を守る
「若い頃は都会への憧れで滋賀を出ることばかり考えていた。でも、子育て環境はよく、雪の季節は大変だけど、四季の豊かさを感じることができる。滋賀の良さです」
長浜で育ち、彦根に住む。その間に位置する米原については―。
「ヨモギ事業に関わることによって、伊吹地域の方々の心の豊かさを感じた。また、伊吹山の麓でヨモギを採取したり、山の手入れをしているときは、タイムスリップしたかのよう。穏やかでゆったりとした時間が流れる。笑顔しかありません」
毎年登る伊吹山の環境は近年悪化しているという。今の豊かな伊吹地域を守り、後世に残していきたい。そんな思いも今回のクラウドファンディングには込められている。 (野瀬吉信)
「平安時代から愛された伊吹よもぎでバスパックを地元の人と作りたい!」プロジェクト
目標金額30万円。目標金額を達成した場合のみ支援金を受け取ることができるAll-or-Nothing方式。募集は4月15日午後11時まで。集めた資金の使途は、ハーブのバスパック開発費▷商品パッケージ3種類のデザイン費▷3種類バスパックの商品作成費▷PR用チラシ、手数料など。リターンはヨモギのバスパックのほか、「よもぎ蒸し」体験など。詳細はこちらのHPを参照。





