首相、日朝首脳会談に意欲 「直轄ハイレベルで協議」

「全拉致被害者の即時一括帰国を求める国民大集会」であいさつする岸田文雄首相。左端は横田早紀江さん=27日午後、東京都千代田区(鴨志田拓海撮影)

岸田文雄首相は27日に東京都内で開かれた北朝鮮による拉致問題の解決を訴える国民大集会で、初めて首相直轄のハイレベル協議に言及した。北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記との直接対話に改めて意欲も示したが、拉致問題解決に向けた交渉を前進させる糸口は見えない。

「今こそ大胆に現状を変えていかなければならない」。首相は集会でこう述べ、日朝首脳会談の実現へ「私直轄のハイレベルで協議を行っていく」と強調した。「ハイレベル」について具体的な言及は避けたが、官邸関係者は「首脳会談実現へギアを一段上げるということだ」と話す。

ただ、対話の機運はしぼんだままだ。昨年以降、北朝鮮はこれまでにない頻度で弾道ミサイルの発射を繰り返し、近く軍事偵察衛星の打ち上げも計画している。4月の米韓首脳会談で「核の傘」を含む米韓の拡大抑止強化を確認したことに対し、北朝鮮は強く反発し、対抗措置を示唆する。

安全保障環境が厳しさを増す中、北朝鮮が拉致交渉のテーブルにつく気配はない。政府関係者は「こちらからボールを投げかけても北朝鮮からは全く反応がない」と漏らす。

米国のシャーマン国務副長官は今月上旬、訪米した被害者家族らに、国連安全保障理事会で北朝鮮の人権問題を扱う公式会合開催に向け日本政府と協力する考えを示した。ただ、ロシアのウクライナ侵略で西側諸国とロシア、中国との対立は深まっている。安保理では中露が北朝鮮を擁護し、国際社会が結束して制裁強化を行えないのが実情だ。

拉致被害者の帰国実現には、米国に加えて韓国との連携も欠かせない。「親北・反日」が鮮明だった文在寅(ムン・ジェイン)前政権から現在の尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権に代わったことで日韓関係は大きく改善した。3月の日韓首脳会談では、尹氏が拉致問題解決を目指す日本の立場を支持。拉致を含む人権問題について連携強化を図る。

外務省幹部は「日韓が同じ方針で北朝鮮と向き合える。どう具体的な行動を引き出すことにつなげるかが大切だ」と話す。(小沢慶太)

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