女子の兵法 小池百合子

後世のために「種」まく

小池百合子都知事

新型コロナウイルス感染症の発生以降、ずっと東京・新宿の都庁舎から半径10キロ程度に閉じ籠もっていたが、このところインドネシア、マレーシア、そして米ニューヨークと、駆け回っている。

8月末、ジャカルタで開かれたU20メイヤーズサミットはG20(20カ国・地域)に関連した都市間会議の場。アジアは洪水、欧州は渇水、干魃(かんばつ)と、世界各地の都市の市長たちから次々に悲痛な現状報告が行われた。たとえば物流拠点のオランダ・ロッテルダム市長からは運河の水位低下で船積み量を抑えざるをえず、「苦労しているよ」と嘆きの声があがった。ちなみにホストシティー、ジャカルタ特別州のアニス知事はポスト・ジョコの大統領候補の一人である。

お隣のクアラルンプールでは、かねてより洪水対策の連携で合意しており、東京の地下調節池のノウハウなどの技術提携をしている。感染症ウイルスも、気候変動も国境を越える問題だ。だからこそ、都市間連携が意味を持つ。

9月15日からは東京都の姉妹都市であるニューヨーク市を訪れ、アダムス市長と治安確保や観光促進などで連携を確認した。

ニューヨーク州は公共交通機関でのマスク着用義務を撤廃し、ニューヨーク市は11月から企業の従業員に課していた新型コロナワクチンの接種義務も撤廃するという。バイデン米大統領の「パンデミック(世界的大流行)は終わった」発言は賛否が分かれるものの、再興に向けたスピードとエネルギーは見習うべきところも多い。国産のワクチン、治療薬を有していることが、何よりも強い。

台風襲来やコロナ拡大の関係で、これまで二度の計画が流れたニューヨーク訪問は、三度目の正直で実現した。久々の摩天楼を前に、心なしか国連本部の建物が小さく見えた。

ロシアが常任理事国である限り安全保障理事会は機能しない。NPT(核拡散防止条約)を巡る1カ月にわたる議論も、最後はロシアの反対で決裂した。そもそも「連合国」なる名称の組織に真面目に拠出金を支払い続けるわが国だ。今こそ国連改革に向けた大きな戦略が求められている。

そのロシアによるウクライナ軍事侵攻は7カ月を経て、変化も見られる。プーチン大統領が部分的動員を可能にする大統領令に署名した。召集を恐れるロシア人男性が国外へ逃れようとする動きや抗議デモなど、負のサイクルに入っている。想定外の動きに苛立(いらだ)つプーチン氏の次の動きが気になるところだ。

不安定なエネルギー状況に円安が重なり、課題は山積している。都民の生活、経済を守るため、9月20日からの都議会定例会には、脱炭素化や今冬の電力逼迫(ひっぱく)対策などを盛り込んだ総額6029億円の補正予算案を提出した。その中には経済の活性化のカギを握るスタートアップ(新興企業)と協働する戦略的展開なども含んでいる。都市の活力創出主体と位置づけ、先駆的な技術を持つ企業への支援を進めていきたい。厳しい時代だからこそ、歩みを止めるのではなく、後世のために「種」をまく。

孫子の兵法にある「算多きは勝ち、算少なきは勝たず」は、ポストコロナ時代に向けて条件を整えることの大切さを教えてくれる。

デジタル化、グリーン社会への移行を進めるためにも、今をゲーム・チェンジの好機としていく考えである。

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