ロシア軍による不法占拠が続くウクライナ南部のザポロジエ原子力発電所の状況が一段と危険の度を増している。
同原発や周辺への着弾が続く中、一時的ではあったが、25日には外部電源喪失という非常事態が発生した。
非常用ディーゼル発電機の起動で事なきを得たものの、背筋が寒くなる。
国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長らによるザポロジエ原発の現状確認が急がれる。中立的な調査を通じて、原発からのロシア軍の退去を促す道筋をつけてもらいたい。
25日の件で、ゼレンスキー大統領はロシアに対し、「ウクライナと欧州を放射能災害の一歩手前の状況に追いやった」と非難した。世界中が一段と強い抗議の声を上げなければならない。
だが、国連の核拡散防止条約(NPT)再検討会議やザポロジエ原発の現況に対応するための安全保障理事会緊急会合でも、危機回避の糸口をつかめなかったのがもどかしい。
同原発には出力100万キロワットのソ連型加圧水型炉(VVER)6基の建屋が並ぶ。ウクライナの全電力の2割を賄い、欧州で最大規模の原子力発電所だ。
今年2月下旬にウクライナ侵略を始めたロシア軍は、3月4日からザポロジエ原発を占拠しており、押し入ったときにも発電所構内で火災が起きている。
ロシア軍は戦車で占拠した同原発を「核の盾」としつつ、軍事物資の集積と火器による攻撃の拠点としている。この行為は、原発への攻撃を禁止したジュネーブ条約に違反している。
ロシアのウクライナ侵略には何ひとつ正当性を見いだせない。ソ連崩壊後のウクライナは、世界3位の戦術・戦略核兵器の保有国だったが、核兵器の放棄と引き換えに同国の安全を保障する「ブダペスト覚書」(1994年)を米英露との間で結んでいる。
プーチン大統領は、こうして丸腰になったウクライナに攻め込んだのだ。これも重大な違反行為である。しかも原発を占拠し、さらに核兵器の使用さえ示唆する言辞で威嚇している。言語道断だ。
ザポロジエ原発の送電線をロシアが併合したクリミア半島向けにつなぐ目論見(もくろみ)も側聞される。冬のウクライナへの停電攻めだ。これも許されることではない。



