ロシアの下院副議長が今年4月、「北海道の全権はロシアにある」と発言したと報じられた。副議長は、ウクライナ侵攻に実際に踏み切ったプーチン政権に近いとされるだけに警戒感が高まった。過去、第二次世界大戦終了時に旧ソ連が北海道の北半分を占領しようとしたことが知られているが、実は1950(昭和25)年に始まった朝鮮戦争下でもソ連による北海道侵略の危機があった。朝鮮戦争開戦前には中国共産党の台湾侵攻計画もあり、半島や台湾で緊張が高まる東アジアの現状とも合致する。昭和20年代後半の「北海道危機」を検証する。(大阪正論室長 小島新一)
日本人抑留者の「軍隊」
軍関係を中心に米英の膨大な公的資料をもとに、軍事史的視点から自衛隊発足の経緯に迫った柴山太・関西学院大学教授の『日本再軍備への道』(ミネルヴァ書房、2010)によれば、ソ連による北海道侵攻の可能性が、1951年初頭から米軍はじめ米当局内で検討され始めた。北朝鮮軍による奇襲で前年6月に始まった朝鮮戦争で、韓国軍は半島南部の釜山に追い詰められたが、同年9月の米軍(国連軍)の仁川上陸作戦により形勢は逆転。ところが同年11月に中国共産党軍が大規模介入し、この当時には再び米・韓国軍側が不利に陥っていた。
