「鬼筆」越後屋のトラ漫遊記

新庄ハムにならえ、かつてのトラ主役に新天地を!

対三菱自動車倉敷オーシャンズ戦に登板した阪神・藤浪晋太郎選手
対三菱自動車倉敷オーシャンズ戦に登板した阪神・藤浪晋太郎選手

〝新庄ハム〟に習うならば、戦力の新陳代謝を促す&野球人生のセカンドチャンスを与える-ためにも藤浪、高山、江越、北條らの処遇を今オフ真剣に検討すべきです。阪神は秋季練習を実施中ですが、話題にすら上がらなくなったのが〝かつての主役たち〟です。本人たちは巻き返しに闘志を燃やしていますが、矢野燿大監督(52)は来季、戦力構想の中心枠に彼らを置いていますか? 新庄剛志監督(49)が就任した日本ハムは今季も1軍戦力だった西川や大田、秋吉らを「ノンテンダーFA」としました。一度、戦力構想から外して新天地を本人たちに模索させるためです。メジャーリーグ的発想を阪神も採り入れる時期に来たのかもしれません。

来季は二匹目のドジョウはなし

同じ関西で日本シリーズが始まりました。知人はチケットをゲットして、オリックスを応援に行く…と意気込んでいました。「お前も取材に行けよ」と言われましたが、両足に重い鉛を置かれたような気分で、とても京セラドームには行く気がしません。オリックスファンの方々には誠に申し訳ないですが、それが阪神タイガースを1シーズン見続けてきた〝後遺症〟なのでしょうか。77勝もして、優勝もなし、日本シリーズもなし! なんでやねん!

ホンマはタイガースも日本シリーズに出ていたんや…と今さら言っても、唇が寂しいだけです。何を言うてんのや、すでに阪神はリセットして秋季練習をスタートしているやんか。もう今年に区切りをつけて、来季2022年のリーグ優勝に向けて動き出しているんだから、ツベコベ言うな! とお叱りの声が聞こえてきそうですね。でも、ツベコベ言いたい~!

阪神に無性に文句が言いたいからなのか、実はその秋季練習にも腹が立っているんです。クライマックスシリーズのファーストステージで巨人に連敗して、今季を終えたのが11月7日。秋季練習は11日からスタートしましたが、練習場所は野手が甲子園球場、投手が鳴尾浜でした。9日に藤原崇起オーナー兼球団社長にシーズン終了の報告を行い、来季続投が決まった矢野監督は「タイガースファンに期待してもらって、結果として優勝できなかったのは責任を感じています。最初にも言いましたけど、これは僕自身受け止めて、また新たな挑戦を来季に向けてしていくことを皆さんにお伝えして、もう一回頑張ろうと思っています」と決意を語っていました。

それなら、なぜ秋季キャンプを行わないのか?昨年に続き、高知・安芸秋季キャンプは行わず、なんだかユル~イ空気で再スタートとは…。いや、分かっていますよ。新型コロナウイルス感染対策のため、やりたくても高知安芸には行けないんでしょ…。でもね、それならそうで、甲子園球場に選手全員を集めて、火の出るような訓示を監督自らが行い、リハビリ組以外は猛練習でしょうよ。

今年77勝したから、来季も70勝以上は確実なんて思ったら、大きな間違いですね。今季はさまざまなラッキー要素があったんです。来季も二匹目のドジョウが出て来たコンニチワ…となると思ったら大間違いですよ。泥にまみれて一から出直すぐらいの気概で臨まなければ来季は怖いシーズンになりますぞ。

かつての主力はどこに

さて、文句はコレぐらいにして、本題です。

日々の秋季練習のニュースを見ていて、感じたのは〝彼らの動静はどこに〟です。藤井康雄1・2軍巡回打撃コーチ(59)が中野に4(フォー)スタンス理論で指導を行ったとか、大山が外野に挑戦するとか、糸井が突如、一塁挑戦とか…さまざまな話題が出ている中で全く?話題にすらならない選手たちがいます。それが藤浪晋太郎投手だったり、高山俊外野手だったり、江越大賀外野手だったり、北條史也内野手だったり…。彼らは少なくとも3~4年前なら秋季キャンプの主役だったはずです。

「プロ野球は弱肉強食の世界」と言われます。時の流れは速く、結果を残さなければ淘汰(とうた)される世界ですね。今季の彼らの1軍成績を書いてみましょう。

藤浪 21試合に登板、3勝3敗 防御率5・21

高山 1軍出場なし

江越 31試合に出場、打率・000 わずか3打席で0安打

北條 33試合に出場、打率・200 1本塁打、6打点。57打席10安打

祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり。沙羅双樹の花の色 盛者必衰の理をあらはす-。平家物語の冒頭の一説ですね。意味するところは「祇園精舎の鐘の声には、この世のすべての現象は絶えず変化していくものだという響きがある。沙羅双樹の花の色は、どんなに勢いが盛んな者も必ず衰えるものであるという道理をあらわしている」ですね。意味は深~いねぇ。

驕る平家は久しからず…とは言いますが、別に彼らは驕っていたわけでもなく、傲慢だったのではないでしょう。しかし、今季の成績とここ数年の成績を見てみると、もはや彼らが阪神の中心戦力ではなくなってしまったことは明々白々でしょうね。応援してきた者からすれば悲しい現実ですが、この世界には力で結果を残した者だけがいい思いをして、生き残れる…という不文律があります。

そして、来季はどうなのか。もちろん、彼らは捲土重来を目指し、目の色を変えて挑むはずです。ただ、今季77勝に貢献した中心戦力がまず来季戦力構想の中核であり、彼らは主力選手や新戦力を押しのけて、矢野監督の評価を逆転させなくてはなりません。簡単ではないでしょうね。なので秋季練習でも話題にならないし、名前すら聞こえない日々となるわけです。

「飼い殺し」よりセカンドチャンスを

チームとして、今後の彼らをどう扱うのか。もちろん、来季戦力として巻き返しを期待するでしょう。一方で他のメンバーとの比較の中で、どうしても居場所が見つからない…と評価するならば、ひとつの参考として考慮すべきは〝新庄ハム流〟です。

新庄剛志監督が就任した日本ハムは今オフ、西川遥輝外野手(29)、大田泰示外野手(31)、秋吉亮投手(32)を「ノンテンダーFA」とし、自由契約にしました。3選手はいずれもフリーエージェント(FA)の権利を取得していますが、球団側は来季の契約を提示せず、野球協約第66条の保留手続きを行わないことになったと発表したのです。この「ノンテンダー」はメジャーリーグで用いられる用語です。球団が来季の契約を提示せず、市場に放出することです。なので3選手は12月初めに発表される契約保留者名簿から外れて自由契約となります。海外を含めた他球団と自由に交渉できるのです。

今季の年俸は西川が2億4000万円、大田が1億3000万円、秋吉が5000万円(金額は全て推定)。FA交渉となれば、年俸が高すぎて手を挙げる球団は少ないでしょうが、年俸ゼロベースからの交渉となるため、3選手には新天地移籍のチャンスが生まれてくるでしょうし、噂では西川や大田は巨人? なんて情報が早くも流れていますね。

彼らをどうして「ノンテンダーFA」としたのか。その大きな理由は新庄ハムにおける、来季戦力構想から彼らの必要性が薄れたからですね。必要戦力ならばたとえ2億でも1億でも契約するはずです。しかし、現状のチーム内の戦力バランスの中で、彼らと同等の力を持った若手選手が存在するのならば、大胆に切り替える…。これが新庄ハムの手法です。そして、結果として3選手を〝飼い殺し〟にすることなく野球人生のセカンドチャンスを与えることにもつながります。

阪神でも、藤浪や高山、江越、北條らの現状の力量とチーム全体の戦力バランスをよく考えた上で、彼らの処遇を考えるべき時期に来ていると思います。ノンテンダーではないですが、例えばトレードや自由契約など、さまざまな方法はあるでしょう。それはタイガースで行き場を失いつつある選手に次のチャンスを与えることにもなりますね。

間違って捉えられると困ります。あくまでも阪神でもう一度、花を咲かせてほしい選手たちです。そこが第一ですが、「残したけど来季も使わない」…ならば、新庄ハムの大リーグ方式の方がファンにも共鳴されるのではないでしょうか。よ~く考えなければならない時期に来た〝かつての主役〟がゾロゾロといますね。新庄ビッグボスは藤浪や高山らかつてのドラフト1位の現状をどう思うのか、聞いてみたいですね。

【プロフィル】植村徹也(うえむら・てつや) 1990(平成2)年入社。サンケイスポーツ記者として阪神担当一筋。運動部長、局次長、編集局長、サンスポ特別記者、サンスポ代表補佐を経て産経新聞特別記者。阪神・野村克也監督招聘(しょうへい)、星野仙一監督招聘を連続スクープ。