包丁のメンテ体験会始動 奈良市の老舗刃物店が研ぎ場新設、コロナで需要増

 鎌倉時代の刀鍛冶をルーツとする奈良市の老舗刃物メーカー「菊一文殊四郎包永(きくいちもんじゅしろうかねなが)」が、若草山中腹にある本店(同市雑司町)に研ぎ場を新設し、伝統工芸士が実演・指導する体験会を始めた。新型コロナウイルス感染拡大による「巣ごもり需要」の高まりで包丁の販売が伸びており、丹精込めて作られた逸品を末永く愛用してもらう狙いだ。

 開祖包永の子孫、包守(かねもり)は江戸時代に奈良から堺に移った。そこで、大和鍛冶の伝統技術を伝えた縁があることから、堺市の伝統工芸士が協力した。

 8月23日には体験会のデモンストレーションがあり、学生グループらが砥石(といし)や機械を使った包丁研ぎ、文字を彫り込む「銘切り」、和包丁に柄を付ける「柄付け」に挑戦。包丁研ぎを体験した会社員の女性は「刃物の奥深さを知り、道具への関心が高まりました」と話した。

 この日は奈良市観光戦略課の職員も視察。同課観光事業支援アドバイザーの駒田文雄さんは「奈良だからこその本物が体感できる。『ウィズコロナ』に対応したマイクロツーリズムや修学旅行を呼び込む重要なコンテンツになる」と期待を込め、体験ツアーの企画に意欲を見せていた。

 同社の柳沢育代社長は「包丁屋でしかできないサービスを深堀りし、メンテナンスサービスを充実させる店作りに行き着いた」と話し、観光にも通じる体験会を予約に応じて随時開催していく考えだ。

 体験会の参加費は、包丁研ぎ(包丁1本と汚れてもいいタオルを持参)1500円、銘切り千円など。問い合わせは同社(0742・26・2219)。

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