PR

WIRED WIRED

絶滅危惧種のウナギが大量に“闇市場”へ。密輸業者と欧州当局との「終わりのない戦い」

 絶滅危惧種であるヨーロッパウナギの密輸が社会問題化している。ウナギの仔魚は多くがアジアへと密輸されることから、欧州当局が取り締まりを強化しているが、いたちごっこになっているのが実情だ。当局が「終わりのない戦い」と呼ぶ密輸対策は、いかに進められているのか--。その現状をレポートする。

TEXT BY ALEX DIGGINS

TRANSLATION BY CHIHIRO OKA

WIRED(UK)

COLIN MILKINS/GETTY IMAGES
COLIN MILKINS/GETTY IMAGES

それはスペイン北部サンタンデール郊外の倉庫に保管されていた。多くの人でにぎわうビーチの喧騒から遠く離れたごく普通の建物で、当局の目もここまでは届かない。内部は薄暗く、静まり返った空間に電気モーターの単調な動作音と水が流れる音だけが響いている。

観光客を装った運び屋たちは、人目を避けるために少人数でやってくる。倉庫に入ると用意されたスーツケースを受け取り、その足で香港行きの飛行機に乗るために空港へと向かう。

スーツケースの中身は、ダイヤモンドでも麻薬でもない。もっとほっそりした物だが、かなりの価値がある。それはヨーロッパウナギ(学名:Anguilla anguilla)だ。

一大産業となったウナギの密輸

ウナギの密輸は一大産業で、欧州だけで年間最大25億ポンド(約3,400億円)の違法な取引がある。今年2月には、マレーシア生まれの貿易商ギルバート・クーが5,300万ポンド(約71億5,000万円)相当のウナギを密輸したとして、有罪判決を受けた。クーは15~17年、6.5トンに上るウナギの仔魚(しぎょ:稚魚になる前の発育段階)を未申告で欧州から持ち出したという。

ヨーロッパウナギの仔魚はガラスウナギと呼ばれる。ガラスウナギはスペインで水揚げされたものだが、クーはこれをまず英国に送ってグロスタシャーにある倉庫で保管し、香港に密輸した。仔魚は香港から中国の違法な飼育場へと運ばれ、最終的には東南アジアの国々などで食卓に並んでいた。

ヨーロッパウナギは絶滅危惧種で、10年からは欧州外の地域に持ち出すことが禁じられている。欧州内では食用販売が認められているが、取引は厳格な規制の下でおこなわれる。

クーは裁判で、自分は水産物の売買の仲介をしただけで、こうしたルールは知らなかったと主張した。ところがアル・カポネと同じように、書類のごまかしから足がついた。英国の国家犯罪対策庁(NCA)の調査によって、仔魚の入った容器には常に虚偽の記載があるラベルが貼られていたことが明らかになっている。

17年2月15日、ロンドンのヒースロー空港でNCAの調査官がクーの輸出貨物のひとつを開封したところ、冷凍した魚の下に200kgものガラスウナギが隠されていた。クーは2月23日に香港の空港で飛行機を降りたところを逮捕され、3月6日に2年の禁固刑を言い渡された。

続きを読む

あなたへのおすすめ

PR

PR

PR

PR

ブランドコンテンツ