過度な円安を放置すれば、日本のみならず米国にも大きな影響が及ぶ。その認識を共有できたことが異例の対応につながった。
日米通貨当局が7月31日(米東部時間)の外国為替市場で円買いの市場介入に踏み切った。15年ぶりの協調介入である。片山さつき財務相が8月3日に明らかにした。
同日の円相場は一時1ドル=155円台前半まで急騰した。7月下旬に164円に迫る水準まで下落したが、政府は協調介入を含む30日以降の断続的な介入で足元の相場を反転させた。
介入は単独実施よりも海外当局と足並みをそろえる方が効果的だ。かねて米国は市場に直接関与する介入に慎重だったが今の円相場は看過しなかった。日米が断固たる対応で一致したことは歓迎できる。
ただし協調介入は対症療法にすぎず、為替安定の効果には限界がある。「日本売り」といえる潮流を根本的に変えるためにも、まずは適切な財政・金融政策を講じなくてはならない。
片山氏は「今後、さらなる協調介入を実施することも躊(ちゅう)躇(ちょ)しない」との談話を出した。過度な円安は輸入物価上昇を通じて物価高に拍車をかける。市場では債券安で長期金利も上昇している。これらが家計や企業に悪影響を及ぼさないよう、政府は引き続き手を尽くすべきだ。
ベセント米財務長官は、「円は適正水準を大幅に下回っている」としていた。トランプ米大統領も「日本は少し助けを求めていた」と語ったが、米国の念頭には、日本経済への懸念の高まりが米市場に波及し、自国の長期金利が上昇することへの警戒もある。過度な円安阻止は日米ともに喫緊の課題だろう。
注目するのは円安要因とされる日米の金利差だ。先に日銀は金利差縮小につながる追加利上げを見送った。ただ、植田和男総裁は物価の上振れリスクとして円安も挙げ、早めに利上げを行う可能性に触れた。市場には高市早苗政権が利上げに後ろ向きだとの疑念がある。日銀には後手に回らぬよう求めたい。
政府の財政運営も重要だ。積極財政で力強い経済を実現できれば通貨高に資する。だが、財政への市場の信認を失えば円の下落や金利急騰が加速しかねない。消費税減税の財源確保を含めて高市政権が責任ある財政運営に徹すべきは当然である。




