ものまねなのに「本物が絶対にやらないことをやる」が信条だ。ロボットのような動きの五木ひろし、あごを突き出して歌う岩崎宏美…。本人やそのファンに怒られながらも「ふざけていたら45年がたっていました」。ものまね界のレジェンド、コロッケが芸能生活45周年の記念公演を6月6~21日、新歌舞伎座(大阪市天王寺区)で開く。定番から新作まで「やりたいことがありすぎて悩んでいます」と、世代を超えて楽しめるおもちゃ箱のようなショーになりそうだ。
後輩たちも出演するため、ネタは無限大に広がる。「リクエストの多い五木さんと森進一さんのデュエットとか、工藤静香さんが3人出てくる『3人工藤静香』。今は亡き方々の『天国メドレー』や、BTSもやりたいなって」
全編ふざけたようなネタかといえば、「フランク永井さんとか『真面目に歌って』と言われるものもある。楽しんでもらうのが一番なので、客席の反応を見ながらその日その日で調整します」と、芸の繊細な一面をのぞかせた。
ものまねには「コピー派とパロディー派がある」という。自身は笑いを追求するパロディー派だが、近年はコピー派が主流だ。パロディー派になじみのない観客も増え、「美川憲一さんとコンサートをしたときに『美川さんはちゃんと歌っていたのに、なんでちゃんと歌わないんですか』ってメールが来てびっくりしちゃって。僕、ずっとそういう芸風できたんだけどな」と苦笑する。
もちろん、ちゃんと歌える。パロディー派であっても、根元にはコピー派と同じ緻密な形態模写がある。取材中も即興で披露してくれた松山千春や玉置浩二の声は、とても似ていて心地良い。
「まねする歌もダンスも『ちゃんと覚える』が基本。基本を守ってから破り、崩していく。『守破離(しゅはり)』がコロッケ流です」。似ていないのに似ている理由はそこにある。
熊本県出身。中学時代からものまねで人を笑わせるのが好きで、昭和の終わりから平成にかけては「ものまね四天王」として一世を風靡した。好調だった当時も、不調に苦しんだ時期も、ものまね界のレジェンドの地位を確立した今も、常に胸にあるのは母の「あおいくま」の教えだ。
「『あせるな、おこるな、いばるな、くさるな、まけるな』。その頭文字であおいくま。『人生はこの5つの言葉たい』というのが母の口ぐせでした」
だめでも「あせるな」、勘違いして「いばるな」、自分に「まけるな」。浮き沈みの激しい芸能界で己を見失わずにいられたのはこの言葉のおかげだ。「悩んだときは頭の中で唱えるんです。何度救われたか」と語るまなざしは優しい。
ものまねは「生きがい」だ。「80代でやるネタも、もう考えてあって。『美川さん』って言ったときの顔が五木さんになっているっていう。何十年もやってきたものまねを間違っちゃうってネタ」と笑う。
「自分に飽きたとき」が引き際だが、「飽きそうにないんです。たぶん、死ぬまでものまねをしているんじゃないかな」。(田中佐和)
◇
記念公演「歌・舞・笑SPECIAL」の問い合わせは新歌舞伎座テレホン予約センター(06-7730-2222)。






