日本人のノーベル賞受賞者たちはどんな教育を受けてきたのか―。今年のノーベル生理学・医学賞の受賞が決まった大阪大特任教授の坂口志文さん(74)と、化学賞の京都大特別教授の北川進さん(74)はいずれも「自由な学風」で知られる京大出身。今回の2人の快挙で京大出身者は東大出身者を上回りトップとなった。高校でみると、坂口さんは滋賀県、北川さんは京都のいずれも公立高校出身。実は、ノーベル受賞者が卒業した高校のほとんどが地方の国公立高校で、「西高東低」の傾向が顕著となっている。
今回2人の受賞決定で、日本人の個人でのノーベル賞受賞は外国籍含めて30人となったが、このうち28人が国公立高校の卒業生だ。
昨年までの受賞者の出身高校を都道府県別でみると、大阪府の高校卒が、川端康成氏(文学)▽福井謙一氏(化学)▽山中伸弥氏(生理学・医学)▽吉野彰氏(化学)の4人で最多だった。今回京都の公立高校を卒業した北川さんが受賞決定となったことで、京都の高校出身者も4人となり追いついた形だ。
一方、東京の高校出身者は利根川進氏(生理学・医学)のみだ。私立高校出身者も少なく、江崎玲於奈氏(物理学)と、野依良治氏(化学)の2人のみで、「関西の国公立高校出身者」の多さが際立っている。
北川さんが卒業したのは、京都市南区の市立塔南高(現・市立開建高)。開建高の尾崎嘉彦校長は「今も昔もいわゆる普通の高校だが、当時の卒業生はみなさん、自由な校風だったとおっしゃいます」という。卒業生の快挙に「歴史と伝統のある京都の学びのフィールドに囲まれ、自由に学んだことがのちの研究人生によい影響を与えたのでは」と喜んだ。
実際京都はノーベル賞と縁が深い。京大出身者やゆかりの研究者が多いだけでなく、日本人で最初の受賞者となった湯川秀樹氏(物理学)、2人目の朝永振一郎氏(物理学)はともに旧制府立京都第一中(現・府立洛北高)の出身だ。
一方、坂口さんは滋賀県の県立長浜北高校の出身。父の正司さんは当時同高の校長だったという。長浜市の浅見宣義市長は「『ふるさと長浜』の豊かな自然と文化歴史が、偉業達成にわずかでも力になれていたなら光栄に思います」と坂口さんの受賞決定を受けコメントしている。
「公立校『非効率』認める空気」
20年以上のキャリアがある塾講師で教育系インフルエンサーの東田高志さんは、「できる限り効率よく学力を上げようとする東京の進学校に対し、地方の公立校には好きなことに熱中する〝非効率〟を認める空気があり、その差がノーベル賞受賞者の数に表れている」とみる。
将来の安定性や高収入が受験勉強の目的になりがちな都市部では、「非効率の連続で不安定な研究者の道」は、サクセスルートから外れた勇気のいる道と認識され、親からも反対されるケースが多いという。
東田さんは「独自の探求心からもの思いにふけるような、ゆったりした空白の時間は、都市部では与えられづらい。地方の公立校にはそれを許容する風土がある」と話した。




