時代の転換期ほどトップの力量が問われるときはない。トランプ米大統領が関税攻勢で国際秩序を崩しつつある今は、まさにそういう局面だ。米国との関税交渉はもちろん重要だが、同時に、欧州や東南アジアなどとの経済連携や供給網の再構築など、石破茂首相自らが各国の先頭に立って指導力を発揮すべき課題はたくさんある。
5月29日の講演で石破首相が言及した環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)もそうだ。首相は自由で公正な経済秩序の重要性を世界に示すため「(TPPの)枠組み拡大やアップグレードに取り組む」と語った。さらに、TPPとして模索すべき欧州連合(EU)などとの対話が具体化するよう、日本は「責任を果たす」とも述べた。
保護主義の蔓延(まんえん)に備えてTPPとEUが協力するという考えは、既にEUとシンガポールの首脳が議論し、ニュージーランド首相も提唱している。これに乗っかるように石破首相が意欲を示したのはいいが、連携の枠組みや協力の中身の具体的な発信はなく物足りなさが残る。
