住民の高齢化や孤立といった課題に直面する京都の公営住宅で、地元の大学生がアイデアを出し合い、入居者の居場所づくりを進めている。舞台は空き住戸を活用した交流スペース。入居者の実体験をもとにしたすごろくやイベントなどを通じ、希薄になりがちな住民同士のコミュニケーションを後押しする。
「懐かしいね」「こんなことあったよね」。2月末、京都市山科区にある西野山市営住宅の一室が、にぎやかな笑い声に包まれた。盛り上がったきっかけは、京都女子大の学生らが制作した「人生すごろく『西野山物語~ダンチノキセキ~』」。この日は約15人の住民がすごろくを体験した。
<食堂で恋した女性にひっかけられて結婚する・2マス進む>
<犬を飼ってみてバレた・2マス戻る>
<買い物の為(ため)に移動販売へ ついでにお友達とおしゃべりする・1回休み>-。
すごろくを見ると、マス目にはこんな書き込みがある。実は、これらは全て学生らが入居者から聞き取ったエピソードだ。駒がボード上を行き来するたびに披露されるエピソードに、入居者からは笑い声が漏れた。
築50年を超える西野山市営住宅では各地の公営住宅と同じく高齢化が深刻で、65歳以上の入居者が全体の約7割を占める。単身世帯も増加傾向にあり、入居者の孤立も懸念されている。
こうした切実な状況を受け、京都女子大家政学部の是永(これなが)美樹准教授の研究室は令和5年から、西野山市営住宅での住民の交流スペースの創設に向けた取り組みを始めた。昨年6月には、社会福祉法人「京都福祉サービス協会」(京都市中京区)が、市から空き住戸を借り受ける形で交流スペースとなるカフェと相談室をオープン。リノベーションでは、京都女子大の学生が改装を手がけた。
交流スペースでは以降、学生らによる楽器の演奏会や寄席など、入居者のニーズに合わせた多彩なイベントを開いている。
好評を集めたすごろくも、交流スペースを活用した新たな取り組みの一環として考案された。参加した入居者の久田節子さん(73)は「子供の頃を思い出して楽しかった」。上田孝代さん(80)は「知っている住民のエピソードで話が広がった」と語った。
すごろくは交流スペースに常設され、訪れた入居者らが自由に楽しむことができる。すごろくを制作した京都女子大3年の興(おき)優花さん(22)は「想像以上に入居者が盛り上がってくれていた」と喜び、「すごろくや学生考案のイベントなどを通じ、住民同士のコミュニケーションが増えてくれたら」と今後に期待していた。(堀口明里、写真も)





