生のお笑いにハマって…若手芸人の「お母ちゃん」 ヨシモト∞ホール支配人・星座庸子さん

TOKYOまち・ひと物語

「お母ちゃん」が愛称の星座庸子支配人=2月27日、渋谷区
「お母ちゃん」が愛称の星座庸子支配人=2月27日、渋谷区

漫才ブームが再来している。結成15年以内の日本一面白い漫才師を決める「M―1グランプリ」の出場者は、9年連続で過去最多を更新し、昨年の大会には1万330組がエントリーした。これまでもM-1決勝進出者など多くの人気芸人を輩出してきた若手の登竜門、「ヨシモト∞(むげんだい)ホール」(東京都渋谷区)支配人、星座(せいざ)庸子さん(48)に令和の漫才事情を聞いた。

責任者でも進んで雑用

「よかった、今月も乗り切った」。毎月の売り上げ目標を達成すると、やっと一安心できる。こんな公演はどうかといったプロデューサーや制作部署からの提案、何にどれほど予算を割くかというお金の管理など、最終的な決裁を行い、責任を負うだけといえばそれまでだが、支配人として気を配らなければならない領域は多岐にわたる。

昨夏、このヨシモト∞ホールの支配人に任命された。これまで千葉市にある「よしもと幕張イオンモール劇場」の立ち上げに携わったり、「ルミネtheよしもと」(新宿区)で支配人を務めたりしたこともある。

責任者としての業務をこなしながらも、時にはポスター貼りやチラシの印刷といった雑用も進んで行う。スタッフから「支配人がやるような仕事じゃない」と止められても気にしない。

「たまたま気づいたからやったというだけ。それがスタッフの意識向上につながればうれしい」。劇場のオープンスタッフなどでポジションを問わず業務にあたってきたため、気取りがない。

ヨシモト∞ホール。3月末で閉館し、来月から「渋谷よしもと漫才劇場」に生まれ変わる=2日、東京都渋谷区
ヨシモト∞ホール。3月末で閉館し、来月から「渋谷よしもと漫才劇場」に生まれ変わる=2日、東京都渋谷区

5年間休みなく働いた

放送技術の専門学校を卒業後、テレビの制作会社に入社し、すぐに出向のような形から吉本興業での仕事を始めた。一度は体調不良で退職したものの、25歳の時に契約社員で復帰。男性アイドルグループのマネジャーとして5年間「休みなく」働いた。

仕事はスケジュール管理だけではなかった。10代だったメンバーの食事管理など身の回りの世話も含まれていたこともあり、地元から離れて仕事をする彼らにとっては母親代わりだった。

周りから、すぐ「お母ちゃん」と呼ばれてしまう生来の世話好き。東日本劇場部部長という肩書も持ち、担当は渋谷の同ホールだけではないが、やはり普段接している芸人が賞レースで勝ち上がることがこの上なくうれしい。

ただ溺愛するだけではだめだ。「賞レース本番が近づくと、舞台裏の空気がピリついてくる」と星座さん。普段は楽屋で出演者とおいしいご飯屋さんやはやりのサウナの話で盛り上がるというが、芸人らの出世がかかったイベント前はそうもいかない。

限られたネタ時間でどれだけ観客の笑いを引き出せるか、1分1秒、一言一句の仕上げでピリピリした芸人らには接し方を変えるなど繊細な思いやりも必要だ。

ライブの楽しさ知って

「ヨシモト∞ホール」は3月末で一度閉館し、4月5日から「渋谷よしもと漫才劇場」として新たにオープンする。星座さんは今、閉館に向けたライブの企画運営と4月のオープンに向けた準備で大忙し。新たな劇場には、121組のコンビが所属し、お笑いライブを展開する予定。

昨今、テレビやインターネットなどでいつでもどこでもお笑いを楽しめるようになった。ライブのお笑いを担当し、若手輩出に関わる星座さんにとって、「劇場はハードルが高く、スマホなどで満足してしまうのでは」というのが切実な悩みだ。

チケットの手売りから企画まで携わってきた身として、お笑いの原点がお客さんと対峙する劇場にあるのは肌身で分かっている。「生で見る楽しさを知ってほしい、きっとハマるはず」。日本全国で広がり続けるお笑い人気に応え、さらに盛り上げようと、今日も東京で奔走する。(堀川玲)

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