水道料金を値上げする水道事業体が相次いでいる。人口減少に伴い料金収入が減る一方、施設の耐震化や老朽化した水道管の更新などに費用がかかるためだ。人口密度が低い地域では値上げ幅はより大きくなるとみられ、将来、水道料金の格差が20倍超に広がるとの試算も。国は経営効率化に向け自治体の枠を超えた広域連携を推進するが、難航するケースも少なくない。
「現行の水道料金では、健全な経営を維持するのは困難」。今年4月に27年ぶりに水道料金を改定し、一般的な家庭では20%近い引き上げとなる和歌山市企業局の担当者はこう話す。
水道事業は料金収入で賄う「独立採算制」が原則だ。和歌山市は平成10年から料金を据え置いてきたが、人口減少や節水機器の普及によって料金収入は減少。一方で物価は高騰し、施設の維持管理に必要な労務単価も上昇した。
さらに、南海トラフ巨大地震などの災害も予測され、施設の耐震化や老朽化した水道管の更新は急務だ。市企業局によると令和7~10年度、基幹となる浄水場の更新や老朽化した管路の更新など、水道料金で賄うべき費用は約289億円に上る。
値上げは各地でみられるが、市民には大きな痛手だ。「あらゆる物価が上がり続ける中、水道料金まで値上げされると、ますます生活が苦しい」。昨年4月、44年ぶりに値上げした兵庫県宝塚市に住む50代の男性会社員は、こう打ち明けた。宝塚市では段階的な値上げを実施。今年4月の引き上げにより最終的に平均19%の負担増となる。
大阪府豊中市も2月、約20年ぶりに水道料金を値上げする。基本料金は約30%アップし下水道使用料も同時に値上げするため、一般的な家庭では2カ月あたり千円以上負担が増える計算だ。それでも将来も安定的に事業を継続できるかは不透明な状況で、市上下水道局は「9年度にあらためて方針を決める」としている。
広域連携探る
こうした状況を踏まえ、自治体の枠を超えた広域連携によって経営の効率化を図ろうという動きもある。
奈良県では県と26市町村で設立した県広域水道企業団が、今年4月から事業を始める。料金体系も原則統一。企業団の担当者は「事業統合のタイミングで料金を一体化するのは全国で初めて」という。
人口規模の大きい自治体が加われば、統合のスケールメリットをよりいっそう生かせる。ただ、県内で人口が最多の奈良市は料金の上昇が見込まれるとして、企業団に加わらなかった。
料金はばらばら…
大阪では平成22年に大阪広域水道企業団が設立され、府内43市町村のうち14市町村と府の水道経営を一体化。昨年11月には、新たに5市の事業統合が決まった。大阪府八尾市の大松桂右(けいすけ)市長は「市には約50億円の統合効果がある」と述べ、国からの補助金が決め手になったと明かした。
だが、奈良と違って会計と料金はばらばらのままだ。事業統合に加わった大阪府富田林市の吉村善美市長は「当面は現行の料金」と説明する。
広島県でも令和4年度、県水道広域連合企業団が発足したが、水道料金の統一には至っていない。14市町と県が水道事業を統合したが、料金が高い自治体と安い自治体の格差は約1・6倍。関係者は「水源から遠ければ、水道管の維持や更新の費用がかかることがハードルになっている。(料金統一の)調整は難しい」と打ち明けた。
将来的には格差20倍、最大料金は月2・5万円
水道事業者間の水道料金の格差は令和28年度には20・4倍に広がる-。会計監査を提供する「EY Japan」(東京)と一般社団法人「水の安全保障戦略機構」(同)は昨年4月、こうした推計を含む研究報告書を公表した。
報告書によると、分析対象とした全国1243水道事業者のうち、96%にあたる1199事業者は28年度までに水道料金を値上げする必要があり、値上げ率の平均は48%。全体の約6割が値上げ率30%以上となり、約4割が8年度までに値上げする必要があるとした。
推計では、28年度には、平均的な使用水量の場合の1カ月当たりの水道料金は3年度に比べて1500円以上アップし、平均4895円となる。
料金格差も広がり、最大料金は2万5837円で、最小料金の1266円の20倍超となる。
広域化で組織力高める必要性 近畿大・浦上拓也教授(公益事業論)
人口減少や節水機器の普及、生活スタイルの変化によって水の使用量は少なくなる傾向が続き、料金収入も加速度的に減少している。老朽化した施設の更新や水道管の耐震化を進めなければならず、エネルギーや資材価格の高騰によって維持管理費用は上昇している。
人件費の削減や設備更新の先送り、一般会計からの繰り入れなどによって水道料金を据え置いてきた自治体もあるが、もはや限界に来ており、値上げをせざるを得ない。「水道料金は安くて当たり前」という意識が定着し、値上げへの抵抗感は強いかもしれないが、議会で認めてもらう必要がある。大規模な自治体ほど水道サービスを供給する費用を比較的抑えられ、水道料金も安くできる。地方で人口密度が低く、水源が不足している地域では、自治体単独で運営できない水道事業体が出てくるだろう。
将来にわたって生活に不可欠な水道インフラを維持していくためには、広域化によって組織力を高める必要がある。都道府県を中心に議論を進め、持続可能な経営を目指すべきだ。







