文化庁が9月に発表した令和5年度の「国語に関する世論調査」(16歳以上が対象)では、月に1冊も本を読まない人の割合が5年前より15・3ポイントも上昇し62・6%と、過去最高になった。交流サイト(SNS)の普及など急激に進むデジタル化で活字との付き合い方が変化する中、「読書離れ」の実態や社会への影響について、読書習慣に詳しい評論家の三宅香帆氏に聞いた。(聞き手 楠城泰介)
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本を読まなくなった要因として、社会全体の環境変化が挙げられる。仕事だけでなく余暇も効率よく使わなければいけないという考え方が主流となり、直接的に生活に必要のないノイズ(雑音)を排除するようになった。本のように、「知りたいこと以外」の情報も得られるメディアが遠ざけられている。
もともと本はエリート男性が教養として読むものだった。戦後の出版社の企業努力もあって読書が民主化された歴史があり、広く読者を獲得していく中で平成以降に「読書離れ」が進んだ。社会的に新自由主義が重用された時期にあたり、社会で共有された価値観より個人の価値観が重視されるようになった。教養を得るより「自己実現」を求める傾向が強くなり、そのために必要な情報が取捨選択されたことが背景にあるだろう。
単純に時間がないから読めないという話であれば、昔は今より長時間労働をする人がいた。現代の情報環境ではスマホに時間を奪われるというが、自分と関係のない知識を入れる余裕やモチベーションが低くなったからではないか。その点、インターネットは自分に必要な情報の取得が容易なメディアで、本のように個人化されていないメディアとは性質が違う。
