<主張>国語世論調査 本に親しむ環境づくりを

社説

移転した文化庁京都庁舎

月に1冊も本を読まない人の割合が6割を超えた。

本は知の宝庫だ。娯楽や趣味としても親しまれてきた。その価値や役割を考えれば、読書離れが進む現状は残念でならない。本に親しむ環境づくりに知恵を絞りたい。官民を挙げて取り組む必要がある。

文化庁が令和5年度の「国語に関する世論調査」を発表した。「もふもふ」や「きゅんきゅん」といった新しい表現に違和感を覚えない人が8割を超え、日常に浸透していることが明らかになった。

一方、5年に1度調査している、電子書籍を含めて「1カ月に読む本の冊数」は、「読まない」と答えた人が62・6%と過去最多だった。驚いたのはこの割合が急増していることだ。前回調査の平成30年度には47・3%だった。これを含む過去3回の調査ではいずれも46~47%台で大きな変化がなかっただけに今回の急増ぶりが際立つ。

前回と今回の間には新型コロナ禍があった。文化庁は「巣ごもり需要で読書をする人が増えたが、逆にネットの活字に触れる機会も多かった。近年、入手する情報源が変わってきているのは確か」としている。

「読まない」と答えた人に「本以外の活字や文字情報をどのくらい読むか」と聞いたところ、交流サイト(SNS)やインターネット上の記事などを含めて75%が「ほぼ毎日ある」と答えた。「読書離れ」は進んでいるが「活字離れ」が進んでいるわけではないようだ。

読書量を聞いたところ、以前より減ったという回答が約7割に上った。理由はスマートフォンなど「情報機器で時間が取られる」が44%、「仕事や勉強が忙しくて読む時間がない」が39%と続いた。スマホを使ったサービスの多様化などで、じっくり本と向き合う読書の時間が削られている現状が浮かぶ。

全国で書店が減少する中、政府は書店振興プロジェクトを始めた。書店といっても規模も立地も多様だ。きめ細かい支援が必要だろう。

物理学者の寺田寅彦は著書で「少なく読み、多く考えよ」という言葉を紹介した(「読書の今昔」)。読書は読んで考えることが大切だ。本の多少は問題ではないが1冊も読まないのでは困る。人生にいつでも本がある。そんな文化を守りたい。

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