認知症などで判断能力が十分でない人の財産管理などを支援する「成年後見制度」が岐路に立っている。増え続ける認知症患者の尊厳ある暮らしを支える仕組みだが、終身契約などの使い勝手の悪さから利用は低迷。国は初めての大幅な制度改正に乗り出した。ただ、終身から期間限定にすると、後見人が外れた高齢者の受け皿が必要になるなど、新たな課題も生じている。
成年後見制度は認知症患者らに代わり、家庭裁判所が選任した弁護士や司法書士ら専門職や親族などが財産管理や医療、介護の契約などを担う。不動産取引や遺産相続などで必要に迫られた家族が申し立てるケースも少なくない。
高額費用で利用低迷
ただ、認知症患者が令和7年に約730万人に上るとの推計がある一方、制度利用者は4年12月末時点で約24万5千人にとどまる。
利用の低迷は、申し立てに高額な費用や時間がかかる、問題解決後も利用がやめられない、財産が厳格に管理される、専門職後見人への報酬の負担が大きい-などが要因とされる。
認知症患者に身寄りがないときは首長が申し立てることも可能だが、低所得者の場合、申し立て費用や後見人の報酬を自治体が負担する問題もある。
介護福祉士として認知症患者を支えた経歴を持つ「認知症の人と家族の会」の花俣ふみ代副代表理事は、「4親等内の親族調査が必要で、時間も費用もかかる。自治体の支援にも限界があり、今のままでは人手も財源も全てがパンクする」と話す。
過疎地では専門職後見人が不足して契約が一手に集中したり、遠方の後見人が選任されたりする事態も発生。専門職や親族以外でも後見人を育てようと、自治体主催の研修などを経て登録される市民後見人の養成も進むが、実際には後見人の大半が専門職という状況だ。
国は制度見直し議論
こうした中、国は4年に当事者団体や有識者などが参加する研究会を設置し、制度見直しに向けた議論を始めた。終身ではなく本人が必要な期間のみ利用できるようにする、後見人がすべて代行決定するのではなく、本人自らが意思決定できるよう支援する-などの方向性が示されており、6年度に中間検証を行うという。
期間限定での利用になると、後見人が外れた後の受け皿が必要になる。そのため国は後見人の代わりに、役割分担した3つのチームで本人を支援する仕組みを考え、愛知県豊田市や長野市でモデル事業を実施している。
①介護保険事業者などが日常生活に必要な金銭管理をサポート②市民後見人らが意思決定支持者としてお金の使い道などを一緒に検討③専門職らによる監督機関が報告などを受け、後方支援する-という仕組みだ。
研究会の委員を務める花俣さんは「専門職に限らず、地域住民の力も借りて支援する仕組みをイメージした。孤立した認知症患者にとって、意思決定支持者が定期的に見守ってくれることは、この上ない安心材料になる」と評価する。
この仕組みを進める上で大事なのは、「制度から外れた人の受け皿に法的根拠を持たせること」(花俣さん)だという。
「受け皿に法的根拠がないと、制度改正後に宙に浮いてしまう人が出る。身寄りのない高齢者の受け皿をしっかりさせることで、初めて期間限定の後見制度が成り立つ」と指摘。「どの世代も自分が利用し、支える側にもなり得るとの視点で考えてほしい」と強調する。(王美慧)
成年後見制度
介護保険制度の創設に合わせ、平成12年の民法改正で導入された。法定後見制度と任意後見制度があり、前者は認知症や知的障害、精神障害などで判断能力が十分でない人に代わり、弁護士や司法書士、社会福祉士、親族らが預貯金の管理や契約行為を担う。本人や家族らが家庭裁判所に利用を申し立て、本人の判断能力によって後見人、保佐人、補助人のいずれかが選任される。本人が判断能力のあるうちに任意後見人や委任事務を定めておく任意後見制度は成年後見制度の利用者数の約1%。






