「ふしょうふずい」という言葉は、どの辞書にも「夫唱婦随」とある。「婦唱夫随」は見たことがない。妻の反旗とおぼしき短歌がある。<夫より呼び捨てらるるは嫌ひなり/まして《おい》とか《おまへ》とかなぞ>松平盟子。
▼平成元年の歌である。作者の訴えに、共感を寄せる人もいるだろう。「おまえ」「あなた」の関係が理想の夫婦だと言う人もいよう。どちらにせよ、女と男という動かし難い性差が作品の底にある。だからこそ読み手に響く一首に思えてならない。
▼この欄を担う当方もまた、ものする文章が、備わった「性」と無縁ということはあり得ない。選べぬもの。背負い続けるもの。個人の胸の内をあえて記せば、「性」に関してはそう思っている。いわゆる「多様性」の時代にはなじまぬ価値観かもしれないが、これは動かし難い。
