世界的な建築家、隈研吾さん(68)が設計したウナギの加工場が29日、境町で着工される。隈さん設計の町内の公共施設は道の駅内のレストランや美術館など7カ所目で、いまや町の観光スポットに。町は隈さんが手がける加工場をステップに、ウナギを干し芋などに次ぐ町のブランドに育てたい考えだ。
利根川の河岸文化
ウナギ加工場は仮称「境町地域産業研究開発拠点施設」。鉄骨2階建て、延べ床面積約1080平方メートルで、外観は隈さん設計の他の町内施設と合わせて白を基調とした。
ひさし部分は県産材を使って、ウナギの柔らかい曲線を表現。総事業費約3億7250万円の63・5%は国などの補助金でまかなわれ、来年3月完成予定。
当面は宮崎県内の企業から、さばいたウナギを仕入れ、加工場では焼き上げからパッケージ作業までを行う。出来上がったら飲食店へ販売し、ふるさと納税の返礼品にも加える予定。将来的には加工場で、稚魚を育てられる環境を目指す。
町は利根川に接し、かつて「河岸(かし)の町」として栄え、ウナギやフナが名産品だった。こうした歴史や文化を踏まえ、「名産を作り、雇用を生み出したい」と隈さんに設計を依頼したという。
まちづくりへ協力
隈さん設計の公共施設は7カ所目で、全国の自治体で最多級。町によると、隈さんとの縁は平成27年9月の関東・東北豪雨にさかのぼるという。
橋本正裕町長が、町の有識者会議の委員を通じて隈さんと知り合い、災害復興の取り組みを紹介したところ、隈さんが評価。それをきっかけにまちづくりへ協力してもらうことになったという。
30年以降、施設が続々とオープンすると、観光客や自治体関係者が訪れるようになった。橋本町長は「町の視察が年間で200件以上もある。ウナギの加工場ができればさらに町が活性化する」と強調する。
滞在先のパリからオンラインで記者会見した隈さんは「小さな拠点を複数配置し、回遊を楽しめる町にしたいと、町長と話し合いながら進めている」と説明。「境町に来た人が工場を地上から見たときに『今までの工場とは違う』『やさしい感じがある』と感じてほしい。従来の機能性だけの冷たい工場とは違った味わいが出せると思う」と話した。
地方事務所も開設
22日には、東京に本拠を置く隈さんの設計事務所の地方拠点事務所「境町サテライト」も開設された。町内の空き家をリフォームした木造1階建て。北海道など全国に開設している地方拠点の一つという。
隈さんによると、新型コロナ感染症後の新しい時代は、東京一極集中ではなく地方にネットワークを広げ、地方の人たちと協働する時代だという。
隈さんは「町を単にデザインするのでなく、住民と一緒にものづくりをしていきたい」と語った。(谷島英里子)




