イマドキTV+

ナレーションなしは余白も響く

新聞業界の友人に勧められたドキュメンタリー番組を、NHKオンデマンドで視聴した。11月27日に放送された『ストーリーズ』の「〝地方紙は死ねない〟▽国を動かしたスクープ舞台裏」。東北地方の新聞社「秋田魁(さきがけ)新報社」の記者たちを取材した番組だ。

迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の配備計画で、住宅街に近い陸自新屋演習場(秋田市)が候補地になった理由を取材し始めた同紙。他の候補地を「不適」とする防衛省の報告がずさんなデータに基づいていることを突き止め、「新屋ありき」の姿勢を糾弾する。一連の調査報道は新聞協会賞を受賞。その後、計画そのものが撤回された。

新聞ジャーナリズムは健在、と感じさせてくれる内容だった。文筆業として共感できたのは、事実を正確に伝えるための丁寧な言葉選びだ。締め切り間際まで何度も手直し。変なニュアンスが出ないように、引用した言葉の語尾を変えたりもする。

読者に、その違いは伝わらないかもしれない。新聞記事の多くは、さっと目を通して終わり。だけど、とことんやる。秋田魁新報を購読したくなった。

内容もそうだが、「ノーナレ」だったのも面白かった。30分ずっとナレーションなし。言葉は取材対象者の語りだけ。テレビのドキュメンタリーではあまり見たことがなかった。正直、意味が取りづらく、背景や人物について説明してほしくなったところも。だけど、すぐに慣れて、これはこれでいい、と感じるようになった。

以前、東日本大震災の被災地で聞き書きをして、相手が口にした言葉だけを連載記事に綴(つづ)ったことがある。ノーナレに近いような気もする。いや、自分の場合は、含蓄のある体験談を私の浅薄な言葉で邪魔したくない、という情けない理由だったので、比べたら失礼か。

過去の「ノーナレ」も何本か視聴した。余白がいい。頭でなく、胸に響いてくる感じ。好きな番組になりそうだ。(ライター 篠原知存)

会員限定記事

会員サービス詳細