脳の血管が詰まることで生じる脳梗塞は、早期に診断し治療を行うことで、運動麻痺や言語障害などの後遺症を軽くすることができるようになってきました。しかし脳梗塞の中には、寝たきりになったり死亡したりする例が多い脳梗塞のタイプも存在します。その代表的なものが「ノックアウト型脳梗塞」です。ノックアウト型脳梗塞は8人に1人が死亡するといわれています。
脳梗塞の約3割は、「心房細動」という不整脈が原因で起こります。心臓は通常、規則正しいリズムで心拍を刻み、血液を全身に送ります。心房細動は、心臓を構成する部屋のうち「心房」という部屋が震えるように動き、十分に拍動しなくなる不整脈です。心房細動になると心房の中で血液がよどみ、血栓という血液の固まりができやすくなります。なかには直径が数センチにまで大きくなるものもあります。その血栓が血液の流れに乗り、脳の太い血管に閉塞を起こすと、広範囲の脳に障害が生じます。このため、心房細動による脳梗塞は、他のタイプの脳梗塞に比べて重症化しやすく、1度の脳梗塞で死亡することもあります。「ノックアウト型脳梗塞」と呼ばれる理由です。
日本には、心房細動を有する人が100万人以上いると考えられています。心房細動の原因はさまざまですが、特に高齢者、高血圧や糖尿病がある人は注意が必要です。一方、心房細動は健康な人にも起こることがあります。心房細動は自分で脈を測ることでチェックすることが可能です。どちらか一方の手のひら側の手首で、脈のリズムを確認します。不規則なリズムだった場合、心房細動の疑いがあります。心房細動が疑われる場合には、循環器内科を受診して、心電図や心臓超音波検査を受けます。携帯型の心電計を装着し、24時間連続して心電図を調べる場合もあります。
ノックアウト型脳梗塞の予防には、抗凝固薬と呼ばれる血液をサラサラにして血栓を作りにくくする薬を使います。これまでは「ワルファリン」という1種類のみの薬でしたが、新しい薬が数種類登場しています。ワルファリンは納豆や緑黄色野菜を摂取してはいけないなど、数々の制限がありました。新しい薬は、このような制限が少なく、合併症を起こす恐れが少ないことが特徴です。
心房細動と診断されたら、自覚症状の有無にかかわらずノックアウト型脳梗塞に注意が必要です。心房細動の症状を自覚しない人でも、自覚する人と同じ確率で脳梗塞が起こります。脳梗塞は、ある日突然起こり、患者さんだけでなく、ご家族の生活も一変させます。「ノックアウト型脳梗塞」を防ぐためにも、早期に循環器内科専門医を受診して、適切な心房細動の治療を受けましょう。
(公立那賀病院副院長 脳神経外科 藤田浩二)




