「鬼筆」越後屋のトラ漫遊記

ダブル流出の危機? スアレス10億円、梅野6億円…果たして球団は提示できるか

クライマックスシリーズで打者を内野ゴロに抑えた阪神・スアレス投手
クライマックスシリーズで打者を内野ゴロに抑えた阪神・スアレス投手

2年総額8億円から10億円の攻防-。阪神が今季42セーブの守護神ロベルト・スアレス投手(30)を引き留めるには超大型契約が必要でしょう。さらに国内フリーエージェント(FA)権を取得した正妻・梅野隆太郎捕手(30)の残留交渉では最低ラインが年俸2億円の3年契約、しめて6億円の提示が必要ですかね。今季77勝をチームにもたらした〝原動力2選手〟の来季残留には複数年契約ながら、しめて14億円から16億円の決済が求められます。今季の阪神の年俸総額は日本人選手が約17億6000万円+外国人8選手で約13億円=約31億円。果たして阪神本社-球団側は奥の院の金庫から気前よく札束を〝解放〟するのか-。来季1年勝負の矢野燿大監督(52)に対する球団側の〝熱度〟が分かりますね。

■矢野監督は「残留」を直談判

いきなり冒頭で書いておきますが、たぶん?きっと?阪神は近日中に新外国人投手獲得の発表を行うはずです。今、こうやって原稿を書いていますが、ひょっとすると、皆さまが拙稿を読んでいる時は、すでに「阪神に新外国人投手」の一報が舞い込んだ後かもしれません。タイプはリリーフ向きなので想像するに「今季限り」のジョン・エドワーズ投手(33)の後釜として獲得するのでしょう。

プロ野球は来季の外国人枠を決めています。それは今季と同様に1軍登録は5選手、当日のベンチ入りは4選手です。今季の阪神は投手がチェン、エドワーズ、アルカンタラ、ガンケル、スアレスの5選手で野手がマルテ、サンズ、ロハス・ジュニアの3選手でした。新型コロナウイルス感染対策のための入国制限で、新外国人選手の来日がズレ込み、アルカンタラとロハス・ジュニアがやってきたのはシーズン開幕後の4月4日でした。その後2週間の隔離期間もあり、1軍戦力になったのは5月中旬でしたね。

阪神以外の他球団でも入国制限の影響を受け、新外国人選手らが軒並み、来日できず、1軍合流も遅れました。なので、阪神はガンケル、スアレス、マルテとサンズが最初から出場できる戦力的アドバンテージを得ました。3月26日の開幕から5月終了までの48試合は31勝15敗2分け。ルーキー佐藤輝明の大活躍もありましたが、外国人勢力がそろっているか、いないか…の戦力差が序盤は大きく成績に影響したと思います。

その中でも特筆すべき活躍を見せたのが守護神スアレスですね。来日6年目、阪神在籍2年目の今季は62試合に登板して1勝1敗42セーブ、防御率1・16です。ソフトバンクから移籍初年度の昨季も51試合に登板して3勝1敗25セーブ、8ホールド、防御率2・24でした。スアレスは2シーズンで67セーブを稼いだわけですね。まさに絶対的な守護神です。

ところが、チームの大黒柱ともいえるスアレスの来季去就は決まっていませんね。昨季のオフに年俸2億6000万円の2年契約を締結したのですが、2年目の選択権はスアレス本人にあるというわけです。なのでスアレスが10日に離日する前に矢野監督は本人に残留を直談判。「スアちゃん頼むぞ! と言うだけは。お願いというと何だけど…。俺らの気持ちはこうだからなというのは伝えた。本当に(試合の)最後にスアちゃんがいてくれるのは、すごい安心感。優勝できなかったけど、チームに大きく貢献してくれた投手。いてもらわないと困る」と話していましたね。まさに正直な気持ちでしょう。

昨オフも大リーグ複数球団から注目され、一度は保留者名簿から外れて流出危機でした。阪神球団は年俸8000万円から2億6000万円に条件を大幅アップし、残留にこぎつけています。なんと1億8000万円の昇給だったのですね。では、矢野監督が残留を懇願した今オフはどうなるのでしょうか?

スアレス自身は離日の際に「もちろん2位で終えたことは悔しいけども、自分にとってもチームにとってもいいシーズンだったと思うよ。ただ、前を向いて1位になるために来年はやっていくしかないね。タイガースファンの皆さん、いつも応援ありがとうございます。これからも、私のこともチームのことも応援よろしくお願いします。これからもチーム全員100%で頑張ります」と球団広報を通じてコメントを発表しています。

この文面だけを読めば、どう見ても「残留濃厚」いや「残留意思を示した」とも感じますが、これは球団広報からのコメント発表ですから、本音がどこにあるのか?いや本音はそもそも入っていないのか?は判断しかねますね。そして、結局の判断基準は「感情や心情」ではなく「ビジネスとしてのマネー」に尽きるのではないでしょうか。昨オフも1億8000万円の破格の昇給で残留…。ならば来季に向けた球団側の条件提示はどうなるのか-。球界関係者はズバリとボーダーラインを語りました。

■最低ラインは年俸4億円の2年契約

「スアレスとしても、年齢的にあと2年から3年が勝負と思っている。その期間でどれだけ稼げるか…だろう。今季が年俸2億6000万円だが、現状で大リーグに復帰するなら最高で年俸4億円の出来高付きぐらいでは…。一応、国内の他球団には移籍できない、という付帯条件がある…と言われているが、果たしてそうだろうか。スアレス側としてそんな損な契約をしているのかな。もし、国内もOKなら国内他球団からは4億から5億円の提示があるだろう。阪神は残留させるためには最低でも4億円の2年契約が必要だろう」

スアレスは1991年3月1日生まれ。来季の開幕は31歳で迎えます。ここ2年間、年間50試合から60試合に登板してきました。勤続疲労を考えるならば、現状のスピード、キレを保つのは後2~3年がリミットと考えるでしょう。逆に言うならば後2~3年が稼ぎ時です。自分を少しでも高く売ろうとするのは当然で、阪神へのチーム愛よりマネーを最優先するはずですね。

ならば、阪神がスアレス側に提示しなければならない残留条件は最低でも年俸4億円の2年契約、総額8億円。話し合いが長期化するならば年俸5億円の2年契約で総額10億円となります。歴代の阪神助っ人の契約でも破格の金額になりますね。阪神では2015年1月に海外フリーエージェント(FA)権を持つ鳥谷に対して年俸4億円の5年契約を締結したことがあります。総額20億円ですね。大型契約となれば、鳥谷以来でしょうか。

■FA権獲得の梅野の動向も

さらにチームには国内フリーエージェント(FA)権を取得した梅野の存在があります。梅野の今季年俸は1億1000万円です。残留条件は年俸2億円の3年契約ぐらいでしょうか。あくまで推測ですが、流出ならばセ・リーグ他球団で正捕手に収まるでしょう。阪神の内部情報を全部、持っていかれます。球団首脳や矢野監督の言葉からは今ひとつ、残留に対する熱い思いが伝わってこない気もしますが、あくまでも残留を期待するなら提示額は総額で4億円~6億円のラインが見えてきますね。

スアレスと梅野は今季、77勝を記録したチームの原動力として働きました。来季も戦力の中核に存在してこそ、「来季こそ優勝」という言葉が出てきます。もしもダブル流出ならば、来季続投で1年契約の矢野監督は思いっきり、剣が峰に立たされることになるのでしょう。阪神球団がスアレス&梅野にどのような条件を提示するのか。それは続投した矢野監督に対する〝熱度〟を知るバロメーターになるのかもしれません。

今季の阪神の選手総年俸は日本人選手が約17億6000万円、外国人8選手が約13億円です。総額約31億円ですかね。複数年契約とはいえ、スアレスに8億~10億円、梅野に4億~6億円を球団は金庫から出す決断を下すのか…。保留者名簿から外れる12月1日は15日後です。残された時間は少ないですね。

【プロフィル】植村徹也(うえむら・てつや) 1990(平成2)年入社。サンケイスポーツ記者として阪神担当一筋。運動部長、局次長、編集局長、サンスポ特別記者、サンスポ代表補佐を経て産経新聞特別記者。阪神・野村克也監督招聘(しょうへい)、星野仙一監督招聘を連続スクープ。