ソウルからヨボセヨ

先人に礼欠く文政権

1988年、韓国の大統領就任式で宣誓する盧泰愚氏(聯合=共同)
1988年、韓国の大統領就任式で宣誓する盧泰愚氏(聯合=共同)

このほど亡くなった韓国の盧泰愚(ノ・テウ)元大統領について、文在寅(ムン・ジェイン)政権は国家葬にすることを決めた。政権の内部ではこれに反対する意見が強かったという。過去、軍事政権の全斗煥(チョン・ドゥファン)・盧泰愚時代に政治的にいじめられた反政府活動家たちが政権の中枢を占めていて、いまなおその恨みが残っているからだ。

そのせいか国家葬決定にもかかわらず文大統領は遺族への弔問に出かけなかった。30日の葬儀にも外遊を理由に参列しないことになった。メディアは盧氏をめぐる功罪相半ばする評価からくる〝折衷案〟としている。

盧氏の〝罪〟というのは大統領になる前の1980年前後、朴正熙(パク・チョンヒ)大統領暗殺事件後の政治混乱期に全斗煥氏とともに事態収拾のためクーデター的に軍部および政治の実権を握り、反政府勢力を武力で弾圧したというものだ。しかし盧氏はその後、民主化憲法の下で反政府・野党勢力の代表だった金泳三(キム・ヨンサム)・金大中(デジュン)氏と選挙で堂々と争い大統領になっている。

1990年5月、宮中晩さん会で天皇陛下(現上皇さま)と乾杯する韓国の盧泰愚大統領(左・当時)=宮殿・豊明殿
1990年5月、宮中晩さん会で天皇陛下(現上皇さま)と乾杯する韓国の盧泰愚大統領(左・当時)=宮殿・豊明殿

大統領としてはソウル五輪開催や対共産圏門戸開放など外交はもちろん、国内でも民主化・自由化を推進し発展に大きく寄与した。にもかかわらず文政権は〝前科〟にこだわり〝功〟を軽視する。先人への欠礼は左翼政権らしいゴーマンであり、同時に国家観の欠如でもある。(黒田勝弘)