気持ちを立て直すのが難しい子や、友達へのちょっかいがやめられない子-。さまざまな児童と長年向き合ってきた現役の教員が、子供の目線から「こんなふうに叱って」という要望を描いた絵本が人気を集めている。「笑いを交えた叱り方なら子供たちも素直に聞ける。教員だけでなく子育てに迷う人にも絵本を読んで力を抜いてもらいたい」との願いを込めた。
絵本は「ぼく、わたしのトリセツ」(アメージング出版、写真)。文章を手がけた松下隼司さん(43)は大阪市北区の市立豊仁(ほうじん)小学校で3年生の担任を務める。昨年12月に予約販売を始めたところ、好評だったことから今年6月に書籍化され、大手書店などに並ぶ。
絵本に登場するのは、自分の非を認めることができずにすねる男児や、あらゆることを嫌がり素直になれない女児-。愛嬌(あいきょう)はあるが指導にてこずりそうな、どの教室にもいそうな子供たちだ。松下さんがこれまでに出会った教え子がモデルになっている。
「おねがいがあります」と子供が自らの〝取り扱い方〟を切り出すのが特徴。「ケンカした子と向かいあわせにして、はなしをきくのはやめて」という男児は余計に興奮してしまうからだと説明し、隣同士で座らせてほしいと訴える。
素直になれず、指示を聞けない子は「『コラ!』と、どなりたいきもちはわかります。間に『ア』を入れて『コアラ!』とどなってください」。すねてしまう子は「きゅうしょくのじかんに、きいてあげてください。すごーくスムーズに、かいけつします」と主張。子供たちからの〝要望〟は分かりやすく、くすっと笑える内容もあり、叱る側も冷静になれそうだ。
もともと怒りっぽい性格で、真剣に子供と向き合うあまり熱くなってしまうこともあった松下さん。誰かを叱った後の教室は重苦しい雰囲気に包まれ、叱られていない児童の表情までもが暗くなる。「心がすーっと離れていくのを感じた」。焦る気持ちから、怒りの感情を抑える「アンガーマネジメント」の講師資格を取得したり、勉強会に参加したりしたものの思うように生かせなかった経験がある。
だが、叱る際に笑いを交えれば子供も気持ちが落ち着き、拍子抜けするほどすんなり指導を受け入れたという。絵本で紹介した声掛けの言葉の大半は試行錯誤しながら見つけたフレーズだ。世の中には多くのトリセツ(取扱説明書)本があるが、「どれも扱う側からの目線。扱われる側の子供の目線を大切にした」と松下さん。「怒ってばかりの大人も怒られてばかりの子供も両方が笑顔になれば」と話している。
今月17日には、教員の本音ややりがいをつづった新著「せんせいって」(みらいパブリッシング)も発売した。原稿料や印税は受け取っていない。(木ノ下めぐみ)





