先週末の昼下がり、自宅近くのカフェ前の路上ではマルガリータを飲み、友人たちと距離を保って語らう人の姿が目立った。ニューヨークも少しずつ日常に戻る兆しがみえてきたが、深刻さに変わりはない。27日には米国の死者数が10万人を超え、「第2波」の到来におびえる日々だ。
米国、特にニューヨーク州はなぜここまで感染が爆発したのか。人口密度の高い都市で、世界中から観光客やビジネスマンが訪れる。さまざまな要因が指摘されるものの、悔やまれるのは初動対応の遅れや見通しの甘さだろう。
振り返れば、3月1日にニューヨーク州で初めて感染が確認された翌2日、クオモ知事は会見で、「ニューヨークには世界最高の医療システムがある。他の国のように悪くなるとは考えていない」と言い切った。その後、ニューヨークの医療機関が病床、人工呼吸器不足で崩壊寸前に陥ったことは周知の事実だ。
とはいえ、不思議なことに、米世論には、その失態を一斉に糾弾するような雰囲気が感じられない。
日々の会見を生配信するツイッターの書き込みには「いいね」を意味するハートマークが飛び交い、「2024年(の大統領選)はクオモで決まり!」「ありがとう、クオモ」と好意的なコメントであふれる。初動の批判よりも、感染拡大後の手腕への評価のほうが浸透している印象だ。
かくいう私も、クオモ氏の会見を楽しみにしていた一人だった。誰にも会わず、家に籠もる毎日が続くと孤独になり、「困難を一緒に乗り切ろう」といった会見でのメッセージに励まされ、涙が出そうになったこともあった。
これまで米国人には好き勝手に文句ばかり言っているイメージを抱いていたが、いざ非常事態に陥れば、「批判」よりも「結束」が前に来る。危機に直面すると、行政はものすごいスピードで物事が進み、大方の国民はそれに文句を言わず、自分でできることを発揮する。パンデミック(世界的大流行)の最中で感じた一つが、米国のそうした姿だ。
米テレビ局は今月27日、日本の死者数の少なさを紹介していた。どの国も予断は許さない。ただ、離れているからこそ、日本の良い面もよく分かってくる。
上塚真由
平成12年入社。さいたま支局、甲府支局、文化部、社会部、夕刊フジ編集部で記者として勤務し、28年5月からニューヨーク特派員。



