正木利和のスポカル

「奇想」がはやる美術界

 なかでも、スーパースターというべき存在なのが若冲で、昨年、生誕300年記念として東京都美術館で行われた展覧会は、最高傑作といわれる動植綵絵全幅が出るということもあって年間3位の44万6000人あまりを集めた。

 こうした「奇想」の切り口は、ことしの美術展にも引き継がれている。たとえば、東京芸大美術館から現在、MIHO MUSEUMに会場をかえて展示されている特別展「雪村」がそうだ。

 戦国期、東国で奇妙な仙人などの絵画を残した雪村を辻氏は「日本絵画史上初めて誕生した奇想の画家」と位置づけ、それが展示の副題「奇想の誕生」へとつながった。

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 既成の概念にとらわれない独創的な「奇想」に基づいた絵画は、日本人の目には「奇妙」と受け止められてきた。

 若冲をはじめ多くの「奇想の画家」たちの名品が、海外の美術館やコレクターの所蔵になっているのをみてもわかるように、日本の伝統美に背いた彼らの創作に「美」を見いだすことができたのは、因習にとらわれず自由にものを見ることができる、海外の人たちの目だったのであろう。

 そうした海外にも、やはり西洋絵画の王道からはみだした「奇想の画家」は存在している。たとえば、初期フランドル派のヒエロニムス・ボスやその影響を受けたピーテル・ブリューゲル、またルネサンス後期のジュゼッペ・アルチンボルドなど15〜16世紀の画家が、その代表といえるだろう。

 彼らの絵もまた、いま海を渡って日本で多くの人たちの目を楽しませている。

 現在、東京のBunkamuraザ・ミュージアムで開催されている「ベルギー奇想の系譜展」は宇都宮美術館、兵庫県立美術館を巡回、ボス派の「トゥヌグダルスの幻視」などの作品が話題を集めてきたほか、大阪の国立国際美術館で開催中の「バベルの塔」展もブリューゲルの作品にボスの「放浪者」などをまじえ、東京展(東京都美術館)では38万人が鑑賞した。また、国立西洋美術館でも野菜や花など植物で肖像画を描いたマニエリスムの画家、「アルチンボルド展」が人気を集めている。

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