大屋博行のメジャースカウトの春夏秋冬

徴兵制が選手を育てる? 韓国人メジャーの活躍の背景を探る

近年、米大リーグで韓国人選手の活躍が目立っている。米国のスカウトもいまや、日本以上の有望市場とみている。その理由は、何なのだろうか。

韓国人メジャーリーガーの草分けは、ドジャースなどで活躍した朴賛浩投手だ。1994年に海を渡り、メジャー16年で通算124勝を飾った。最後の2年間は日本のオリックス、韓国のハンファでもプレーした。

朴賛浩投手の場合、韓国のプロリーグで活動はせず、そのままメジャーに挑戦した。その後もそういったケースが多かったのだが、最近では韓国、そして日本のプロ野球を経て、メジャーに挑むケースも増えてきた。

昨オフには、日本で実績を残した阪神の呉昇桓投手がカージナルスに、ソフトバンクの李大浩内野手がマリナーズに籍を移した。呉昇桓投手は日本で2年連続して最優秀救援投手のタイトルを獲得。李大浩内野手も通算4年で98本塁打、打点王にも輝いた経歴の持ち主だった。もちろん、韓国プロ野球でも一流の成績を挙げ、日本に来ていた。

呉昇桓投手は、渡米1年目の途中からクローザーに抜擢された。新人王の有力候補に挙げられ、李大浩内野手も2桁本塁打を放って存在感を示している。韓国系の選手の特徴はパワフルさだ。これは、米国人が好むところで、中学や高校では日本人以上の練習量をこなす。現在はレンジャーズの秋信守外野手ら、日本人が苦しむ野手でも活躍するケースが出ている。

韓国人選手が次々とメジャーに進出した背景として、もう一つ重要なのは、ここのところ、韓国プロ野球に日本人の指導者が渡り、日本の細かい野球を教えているということだ。現在、元阪神のヘッドコーチだった高代延博氏やロッテで投手コーチを務めた経験がある落合英二氏をはじめ、数え切れない数の指導者が携わってきた。もともとパワーに恵まれながら、粗さも目立った韓国野球に、緻密な野球が注入され、レベルが向上した。

加えて、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)をはじめ、国際交流試合が増えたことも、質のアップにつながったと思う。

また、日本と異なって韓国には徴兵制があり、心身ともに鍛え上げられている。いまでは軍隊内にも練習施設やトレーニング器機があるそうで、より一層、技術面でも筋力的にも、育ってきているらしい。

韓国人プレーヤーにとっても、国内リーグに比べるとメジャーは金銭的に大きな魅力だ。日本をもはるかにしのぐメジャーで成功すれば箔がつく。単純に年俸の相場が上ということもあるが、韓国内でのCM出演料などの副収入も馬鹿にならないのだという。

人口が大きく違うこともあり、日本と韓国のプロリーグでは、まだ日本の方がレベルは全体的に高い。また、韓国ではもともとお金持ちしか野球をはじめとしたスポーツに力を注ぐことができないという、構造的な問題もある。だが、韓国人選手に顕著な「メンタルの強さ」がある限り、今後もメジャーで活躍する韓国人選手は絶えることはないだろう。

大屋博行

おおや・ひろゆき 1965年10月生まれの51歳。大阪府出身。高校中退後に渡米し、アリゾナ州スコッツデール市立コロナド高校で投手としてプレー。コロナド高を卒業後に帰国し、プロ野球阪神で練習生、歯科技工士などを経て98年に米大リーグ、アリゾナ・ダイヤモンドバックスの国際スカウト駐日担当に就任。2000年からアトランタ・ブレーブスの国際スカウト駐日担当として日本国内の選手発掘に励む。

Google検索で「産経ニュース」を優先表示。ワンクリックで簡単登録

会員限定記事

会員限定記事一覧

スポーツランキング

  1. 広島の球団本部長「ゾンビたばこ」を巡る週刊誌報道について「コメントはしない」

  2. サッカー・伊東純也選手は「訴えは虚偽」、女性は「同意なく性行為」双方が告訴の過去

  3. イングランドは地球を約半周、フランス最短 サッカーW杯、「4強」の移動距離を分析有料会員記事

  4. 「意見しやすいけど…」巨人・阿部前監督辞任から約1カ月 選手が語る指揮官交代の光と影有料会員記事

  5. 「立ち合いで当たれたから動けた」 藤ノ川、右足1本で逆転 大相撲名古屋場所3日目

  6. サッカー元日本代表の父譲りの上昇志向 ラクロス女子・中沢こころ、ねがい姉妹 ロサンゼルス五輪開幕まで2年

  7. MLB球宴、本塁打競争で村上宗隆は第1ラウンドで9本放つ 優勝賞金は100万ドル

  8. 初代・長嶋茂雄賞は佐藤輝明か森下翔太か 2リーグ制で初の「阪神V、巨人2位」決着も 鬼筆のトラ漫遊記

  9. 東大合格者日本一の進学校・開成高からバレーボール期待の新星 203センチ名取遼

  10. 世界体操男子代表の前田楓丞、萱和磨ら所属のプロチーム「ハヤブサSC」に加入