第63回産経児童出版文化賞

産経新聞社賞『すぐそこに、カヤネズミ』

『すぐそこに、カヤネズミ 身近にくらす野生動物を守る方法』
『すぐそこに、カヤネズミ 身近にくらす野生動物を守る方法』

 □『すぐそこに、カヤネズミ 身近にくらす野生動物を守る方法』畠佐代子著(くもん出版・1400円+税)

 カヤネズミは、大人の親指くらいの大きさ、重さは五百円玉ほどの小さなネズミ。カヤ(背の高いイネ科の植物の仲間)などの葉を器用にからめて球状の巣を作る。北海道と沖縄を除く各地の草むらに生息しているが、めったに気付かないし、草地の減少や環境の悪化により絶滅危惧種になりつつあるという。

 文学部を卒業したが、大学院で理系に転じた著者が、カヤネズミの研究を写真やイラストを交え、親しみやすく紹介する科学読み物。巣作りや子育ての様子、カヤ原の変遷などが、野外観察の臨場感とともに描かれる。さらに、フィールド調査だけでは保全ができないという壁にぶつかり、全国ネットワークでデータを集め保全運動を展開する実践的な科学者の生き方も示される。生物好きな読者の中には、将来、こんなふうに社会に貢献したいと夢を抱く子もいるのでは。(東京子ども図書館理事長・張替惠子)

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